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約30年前の日本のバブル崩壊期(1991-1993年)後の日本の時代背景とコロナ禍の今が重なって捉えられます。日本を代表する小説家・随筆家の辿り着いた人生観が、20余年を経て改めて、今を生きる力になると思います。人はみな大河の一滴として永遠の時間に向かっていくのであり、ブッダや親鸞が究極のマイナス思考から出発したことや著者の考え方を知ることで、現在も続く“心の内戦の時代”を生き抜く力が得られると思います。   新型コロナワクチン 本当の「真実」(講談社現代新書 2021) 宮坂昌之/著  新型コロナウイルスに関して、マスコミでは感染症学の専門家はもとより、必ずしも専門家とは言えない多数の人物が玉石混交のコメントを述べ、インフォデミックの状況を作り出してきました。本書は、免疫学の第一人者である著者が、科学的エビデンスに基づいて新型コロナワクチンの有効性と安全性を徹底分析した解説書であり、何が真実で、何が真実でないのかを理解することができます。         FACTFULNESS 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣(日経BP 2019) ハンス・ロスリング、オーラ・ロスリング、アンナ・ロスリング・ロンランド/著  上杉周作、関美和/訳  FACTFULNESSとは、「データを基に世界を正しく見る習慣」を意味することのようです。私たちが世界を誤って認識している原因は、本能からくる思い込みにあると著者は考えています。人口、貧困、教育などについての13の質問について、データに基づいた真実の世界の姿を示しつつ、思い込みを克服する習慣を身につけるように提唱する啓蒙書。               看護学科 上山和子先生の読書ノート 南極の氷に何が起きているか 気候変動と氷床の科学(中公新書 2021) 杉山慎/著  気候の変動とともに、今南極の大地の氷の塊に変化が起こり続けていることを知らせる書である。気温の上昇による氷床の流れに注目し、加速している現状が述べられている。  昨年のノーベル物理学賞を受賞された真鍋淑郎先生も指摘された気候の温暖化も含めて注目したい。今後の私たちの生活にとても関係していることを取り上げている書です。       土を喰う日々 わが精進十二カ月(新潮文庫 1982) 水上勉/著  人々の食生活は、四季の旬の野菜を摂取しています。つまり土で育てられた野菜は、四季折々で実をつけ、食卓に楽しみを提供してくれます。調理法はシンプルに野菜の素材を大切に喰うことの意味を伝えています。年頭の1月では、お節料理の一品である「くわい」について取り上げています。そして、精進料理は、料理の基本理念であること、日々の菜の工夫を教えてくれる書です。   やわらかい知性(河出新書 2021) 坂東眞理子/著  「やわらかい知性」とは、自分の経験や知識に固執するのではなく、他人の気持ちや価値観も含めて受け入れることができるという「心の在り方」を示している書です。コロナ禍において行動制限がある中、今までの生活習慣を改めて見直し、人々との心の距離を保ち、融通無碍に他の人の価値観を受け入れていくことを取り上げています。  そして、つかず離れず心地良い人間関係をつくる知恵と社会との繋がりについて触れており、社会での人間関係形成についての指南書です。         金山時恵先生の読書ノート 逃げるな新人外科医(泣くな研修医2)(幻冬舎文庫 2020) 中山祐次郎/著  この本の著者は、現役の外科医です。著者の研修医時代の話が書かれています。医療現場の日々の様子をリアルに表現されていて、初めての当直や看取り、さらに手術の際の描写もリアルであり読みやすいと感じました。研修医の苦悩、葛藤を通して生と死、命の尊さについて考えることができます。   子どもの脳を傷つける親たち(NHK出版新書 2017) 友田明美/著  衝撃的なタイトルではないでしょうか。大人、親の不適切な関わりにより、脳が変形すると著者は書かれています。不適切な関わりとは虐待を指しています。子どもは発達途上にあり、その脳にとって日常が大切なときです。その時期に不適切な関わりがどのような影響を及ぼすのかを具体的に書かれています。   ちがうことは強いこと その子らしさを大切にする子育て(河出書房新社 2021) 星山麻木/著  この本の著者は、特別支援教員の現場で多くの親子に寄り添ってこられた方です。子育ての中で、発達の早い遅い、大きい小さい、できるできないなど“ちがう”ことに不安を感じている保護者が多いのではないかと思います。保護者自身がそれまでに生きてきた環境の中で、みんなとちがうと大変という価値観があるのではないでしょうか。子どもの「ちがい」をその子の強みとして受け止めていくことの大切さが書かれています。         四宮美佐恵先生の読書ノート 気にしない練習(知的生きかた文庫 2015) 名取芳彦/著  生きていくうえで、気にすべきこと「自分を高め、他人を安心させること」がある一方、気にすべきでないこと「気にしても自分が向上できそうにないこと」もあります。そこで、「気にする人」にとつて、心穏やかな毎日を作り、「気にしない」人になるための手掛かりを知ることができます。また、「気にしない」でも良いですが「無関心」にはならないで、物事に関心を持って楽しく生きていくことを教えてくれています。       読書をする子は○○がすごい(日経BP 日本経済新聞出版本部 2021) 榎本博明/著  読書には、言葉を覚えるというメリットがあるのに加えて、自分以外の視点に対する想像力を養うというメリットもあり、読書によって語彙力や読解力のような認知能力を高める効用のみならず、忍耐強さや共感性といった非認知能力を養うという効用もあることを示し、読書習慣を身に付けるにはどうしたらよいかを考えるヒントが書かれています。         結局、「すぐやる人」がすべてを手に入れる(青春文庫 2018) 藤由達藏/著  能力、知識、学歴の差は、人生そのものを大きく左右するものではありません。しかし、成功する人、評価される人、信頼される人には確実に「ある違い」あります。それは、「すぐに行動に移せるかどうか」です。この行動力で、すべてが決まってしまいます。そこで、この本は、「一瞬で行動に移せるようになるための方法」を紹介してくれています。自分を変えたいと思われている方は是非一読してみてください。           矢庭さゆり先生の読書ノート ひとりでやらない 育児・介護のダブルケア(ポプラ新書 2020) 相馬直子、山下順子/著  子育て期と親の介護が同時期に重なり、両方を担う状態のダブルケアについては、「8050」「8040」「9060」などとともに、地域保健・福祉領域で着目されています。現在の複合化・複雑化した支援ニーズに対して、制度の枠のみでは対応できない状況があります。将来、保健・医療・福祉の仕事に就かれる学生の皆さんに読んでいただきたいと思います。         共生学が創る世界(大阪大学出版会 2016) 河森正人[ほか]/編  “共生社会”という言葉をよく耳にすると思います。大阪大学の研究グループによる研究をまとめた本ですが、人が地域で共に生きるということはどういうことなのか、互いの価値観を認め合い、対等の関係を築きながら共に生きる共生学についてまとめています。読みやすいので、学生の皆さんの関連科目の副読本としてもお勧めします。       母が重くてたまらない 墓守娘の嘆き(春秋社 2008) 信田さよ子/著  タイトルにドキッとしますが、臨床心理士であり、カウンセリングセンター所長の著者がカウンセリングに訪れる娘たちを通して、さまざまな家族の姿を浮き彫りにしています。娘を唯一の生きる希望とした母、一生懸命愛情をかける母に向き合う娘たちの思いを描いています。現代でも母と娘の関係は永遠ともいわれます。母として、娘として、両者の視点から考えさせられる本です。           原田信之先生の読書ノート 食料危機 パンデミック、バッタ、食品ロス(PHP新書 2021) 井出留美/著  現在、食料危機はかなり深刻な問題となっており、世界の11人に1人が飢餓に苦しんでいるという。本書で紹介している内容は、食品ロス、COVID-19パンデミック前後の世界の食料危機の状況、アフリカの食料事情、サバクトビバッタの被害と食料危機、ミツバチの世界的な減少と食料供給への影響などで、それぞれ興味深いものとなっている。巻末に「私たちができる100のこと」がまとめてあり参考になる。       未来のカタチ 新しい日本と日本人の選択(小学館新書 2020) 楡周平/著  日本の少子化の問題はかなり深刻で、生産年齢人口が激減し、経済規模は縮小し続けていくと予想されている。本書では、少子化の時代にこれからの日本はどうすれば良いのかという難しい問題について、子育て家庭に特化した巨大集合住宅施設を公費で建設して無料で住めるようにする「ネスティング・ボックス(巣箱)」構想や、高齢者の移住で地方を活性化させる「プラチナタウン」構想など、独創的なアイデアを種々提示している。       スマホ断食 コロナ禍のネットの功罪(潮新書 2021) 藤原智美/著  現在、全世代がスマホを使うようになり、暮らし、仕事、人間関係を維持するツールとなっている。本書では、スマホは大変便利であるが、その反面、集中力を奪う、生の声よりSNSの言葉を信じてしまう、デジタルに慣れすぎてリアルの自分を重たく感じるようになる場合があるなど負の面があることを指摘し、スマホ依存状態をリセットするための方法として半日でもいいので一定期間スマホから離れる「スマホ断食」を推奨している。     土井英子先生の読書ノート 死の文化を豊かに(ちくま文庫 2010) 徳永進/著  鳥取市のホスピス「野の花診療所」で著者である医師がこれまで関ってきた患者や家族のことを語っています。死についてここまで言い切れるのかと思うほどの語りです。誰もがいつかは迎える死を暖かく、謙虚に語っているエッセイです。   看護実践にいかすエンド・オブ・ライフケア(日本看護協会出版会 2018) 長江弘子/編  我が国は高齢化の進展により、疾病構造の変化に加え、複数の慢性疾患を抱えながら地域で暮らす人が増加しています。そのため、地域で「その人の生き方を支えるケア」としてエンド・オブ・ライフケアが欠かせません。「本人の意向」を中心に据えた理論と実践、ケアを実践する基本的考え方が書かれています。   ケアを問いなおす 〈深層の時間〉と高齢化社会(ちくま新書 1997) 広井良典/著  ケアについて筆者は、①臨床的/技術的レベル、②制度/政策的レベル、③哲学/思想的レベルで論じられていると述べています。③のケアを論じる場合には、ケアとは何か、人間にとってどのように意味をもつのかという基本的な問いについて論じています。人に関わる職業に就く学生の方には一度手に取って読んでいただきたい書籍です。     木下香織先生の読書ノート 認知症の私から見える社会(講談社+α新書 2021) 丹野智文/著  39歳のときに若年性認知症と診断された著者は、自らの体験を語る講演会や認知症の当事者のための相談窓口を開設して精力的に活動しておられます。300人を超える当事者との話を通じてまとめられた当事者の声。日常を継続できるよう、認知症によって難しくなることを補う「自分で決めて続けてきた工夫」もいろいろ。当事者の声を聴いて、私たちに何が求められているのか考えるヒントがちりばめられた1冊です。       オープンダイアローグ 私たちはこうしている(医学書院 2021) 森川すいめい/著  「対話」について学んでみたいと思いながら過ごしていたところ、この本に出合いました。表紙のイラストが「オープンダイアローグ」への高かった敷居を下げてくれたようです。オープンダイアローグの誕生の歴史から書かれているので、初めて読むにもぴったりです。「私たちはこうしている」のタイトルの通り、対話の場に同席しているかのようです。相対しているひとと自分自身と、丁寧に向き合いたいと感じます。   イヤな気分をパッと手放す「自分思考」のすすめ 他人にも感情にも振り回されない方法(誠文堂新光社 2017) 玉川真里/著  「元自衛隊の臨床心理士」という肩書の著者が、ご自身のうつの経験、学校や自衛隊で多くの人と向き合うなかで気づいた「イヤな気分」の正体と対処について書かれています。だれもが1つは当てはまると思えるさまざまな「生きづらさ」も、長所という視点でとらえています。落ち込みや自分の弱さから学ぶ「自分思考」の考え方を知ることは、日ごろの意識を少し変えてくれる気がします。           栗本一美先生の読書ノート がんと共に生きていくときに、知っておいてほしいこと 人生を丸ごと抱きしめて生きるヒント(山と溪谷社 2020) 秋山正子/著  筆者は、マギーズ東京を設立し、在宅ホスピスケアと訪問看護で多くのがん患者とご家族に寄り添ってきました。がんと共に歩んだ方たちが人生を紡いだ最終章のお話が綴られています。そして、その方たちの最終章から看護師として何ができるのか、さらに自分や家族の最終章は……と考えさせられます。人は、いつかはお別れの時がやってきます。その時がいつかわからないからこそ、目の前にいる人との時間や、二度とこない「今」を大切にしなければならないと改めて思います。   最後のレッスン(ハーベスト出版 2021) 若佐久美子/著  病と共に生き抜くバレエ教師の実話です。彼女は、「何度指導してもどうしても身につかない」「頑張って伝えても理解してもらえない」と躓きながらも、バレエの指導を続けています。彼女は、顆粒膜細胞腫、腸閉塞を繰り返し、医師から「これが最後の治療」と告知され、人工肛門の増設も決断します。それは、「子どもたちが指導者を失ったら路頭に迷っては困る」「現場で指導ができないなら、生きながらえても意味がない」という強い信念からです。彼女の最後の力を振り絞り、人生を歩き続ける姿から勇気を頂けます。   病院というヘンテコな場所が教えてくれたコト。(いろは出版 2018) 仲本りさ/著  現役看護師のイラストレーターが書いたイラストエッセイです。著者が看護師になって1~2年目の一番苦しかったころの出会いの実話です。「病気と人の死」がテーマとしてあり、患者さんの死を受け入れられず戸惑う気持ちの揺れや、1~2年目の看護師の誰もが経験することが描かれています。看護師の患者さんへの関わりを通して、普通にできていることのありがたさや、自分にとって幸せなものとは何かを考えて頂ければと思います。     郷木義子先生の読書ノート ちょうどいい孤独(かんき出版 2021) 鎌田實/著  本書は家族や友人がいても、「孤独」だと感じる時間は必ずある。そこをどうやって自分自身の時間をポジティブなものに転換していくかを考えさせてくれる内容です。孤独を癒すのではなく、孤独を楽しむことを提案しています。コロナ禍において私たちの日常生活は変わり、年代に関係なく孤独を感じざるを得ない日々を送っていますが、「孤独」をどう生きるか、生き方を提案してくれています。       「還る家」をさがす子どもたち(東山書房 1997) 富田富士也/著  本書は1997年発行の著書ですが、この時代から子どもを取り巻く政策や取り組みは進んできている感があります。然し現実には虐待、不登校、ヤングケアラーの問題など改善されない問題や新たに起こってきている課題はまだまだ山積されています。この本にある、「よくやっているよ」の一言とともに子どもの問題を改めて考えるためにぜひ読んでみてほしい1冊です。     礒本暁子先生の読書ノート あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。(スターツ出版文庫 2016) 汐見夏衛/著  中学2年生の百合は戦時中の日本にタイムスリップしてしまいます。そこで特攻隊員の彰や食堂の女将さんに出会い、<自分自身><生きるということ>と向き合って成長していく物語です。   デナリ ともにガンと闘い、きみと生きた冒険の日々(辰巳出版 2021) ベン・ムーン/著、岩崎晋也/訳  29歳の若さで直腸がんの闘病を経験したベンとつらいときに寄り添ってくれた愛犬デナリの物語です。言葉はなくても伝わる愛があると思えました。   7.5グラムの奇跡(講談社 2021) 砥上裕將/著  新人視能訓練士さんの奮闘記です。新人視能訓練士さんの経験を通して、眼科の患者さんの世界が垣間見えるかもしれません。               矢嶋裕樹先生の読書ノート 超加速経済アフリカ LEAPFROGで変わる未来のビジネス地図(東洋経済新報社 2021) 椿進/著  アフリカほど誤ったイメージで語られる国(正確には国々)はないだろう。今やアフリカは高度成長期を迎え、モバイルマネーや遠隔医療、ドローン物流など、日本以上に先進的なテクノロジーが浸透している領域もあるという。各国企業の戦略と思惑が交錯する中、アフリカという若くて(中位年齢19.7歳)かつ巨大な(約13億人)マーケットが今後どのような成長・発展を遂げるのか、目が離せない。       データでわかる 2030年 地球のすがた(日経BP 日本経済新聞出版本部 2020) 夫馬賢治/著  SDGsというワードは、わが国では企業等のブランドイメージ構築のために利用されている感がある。しかし、本書を読めば分かるように、SDGsというワードを使わざるをえないほど、世界は危機的な状況にある。気候変動を背景とする自然災害・異常気象、アジア・アフリカの人口増と食糧危機・水不足、新興感染症など、すでに起こっている、あるいは起こりつつある様々な環境課題や社会課題がデータを基に解説される。世界の実情を知るために、ぜひ読んでほしい本。   「感想文」から「文学批評」へ 高校・大学から始める批評入門(小鳥遊書房 2021) 小林真大/著  文学批評とは「文学作品を客観的に評価すること」であり、批評の型さえ意識すれば、高校生や大学生でも文学批評ができるという。同じ文学作品でも型によって違ってみえてくるから面白い。批評の型として紹介される「作家論」「ニュークリティシズム」「構造分析」「イデオロギー批評」「読者論」「メディア論」は、いずれも文学作品のみならず、語り(ナラティブ)等の分析にも適用可能であり、大変参考になる。           塩見和子先生の読書ノート 働くことの人類学 仕事と自由をめぐる8つの対話(黒鳥社 2021) 松村圭一郎、コクヨ野外学習センター/編  本書は、7人の人類学者が「働くこと」をテーマに語り合ったポッドキャスト番組の書籍版です。狩猟採集民、アフリカの貿易商、世界を流浪する民族などの働き方を知ると、自分たちの社会の当たり前が揺るがされます。自分の偏狭な考えには、なかなか気づけないものです。私たちとは異なる環境や文化に暮らす人々の生き方から、仕事観や人生観が変わるかもしれません。       動物たちの家(みすず書房 2021) 奥山淳志/著  動物たちとの出会いと別れがテーマです。写真家である著者が、動物と触れ合った時の感動や動物たちの感情の変化など詳細に描かれています。多くの動物は人間よりも早く死を迎えますが、寿命のほかにもさまざまな理由があり、去るまでの心を交わす時間を大切にされていて、命あるものへの深い愛情が伝わってきます。       看護のためのポジティブ心理学(医学書院 2021) 秋山美紀[ほか]/編  幸福を高め、レジリエンスを高めるための、さまざまなヒントがあります。ポジティブであることが、人間の健康や幸せにどのように関わるのか、看護の原点につながる15の概念の意味と看護への活用方法について書かれています。他者の幸福を考えると心が温かくなります。     山本智恵子先生の読書ノート 認知症世界の歩き方 認知症のある人の頭の中をのぞいてみたら?(ライツ社 2021) 筧裕介/著  認知症の方が抱えているトラブルは、専門的に学んでいるとはいえ、わからないこと理解できないことが多くあります。この本は、認知症の方の視点で「認知症のある方が生きている世界」を見られるように書かれています。お風呂を拒否する方、家にいるのに家に帰ると訴える方にどのように声掛けるべきかわからなかったことはありませんか。ご本人がどのような世界にいて、どんな気持ちなのか……を考えながら読んで欲しいです。       ママがもうこの世界にいなくても 私の命の日記(小学館 2021) 遠藤和/著  TVの『笑ってコラえて!結婚式の旅』で、大腸がんステージⅣの診断を受けたとても綺麗で可愛い女性が結婚式を挙げるという企画を見たのを覚えていて、その時の花嫁がこの本の著者でした。放送から2年後にこの本を手にとり、すでに亡くなっている彼女の闘病・恋愛・結婚・妊娠・出産・育児がつまった数年間が本に書かれていました。TVではとても幸せそうで、笑顔で前向きだったのがとても印象に残っています。21歳でがんの告知を受け、命をかけて出産し、闘病した彼女の素直な気持ちが書かれている日記です。     看護職員の惨事ストレスとケア 災害・暴力から心を守る(朝倉書店 2020) 松井豊/編著  惨事といえば、災害や大きな事故……と考え、自分には関係ないと思われるかもしれません。しかし、災害はいつ起こるかわからないので、その備えとして、自分の心を守ること知っておくことは必要だと思います。また、災害支援の際の惨事ストレスと聞けば、あまり関係ないと思われるかもしれませんが、日常の看護師業務でも惨事ストレスを受けることもあり、事例やその対処方法なども書かれており、知っておくことも必要だと思います。           山野井尚美先生の読書ノート 私が日本人になった理由 日本語に魅せられて(PHP研究所 2013) ドナルド・キーン/著  1922年ニューヨークに生まれの著者は、18歳のときに源氏物語に感動し、日本文学・文化の研究に志し幾多の業績をあげておられます。日本政府から文化功労者に選ばれ文化勲章も受賞しただけでなく、晩年には日本国籍さえ取得し、日本人となりました。  日本名「鬼 怒鳴門 (キーン・ドナルド)」が、日本人が大切にすべきこころの豊かさについて教えてくれる1冊です。     オレ、3年で咲いてみせます。(泰文堂 2014) 髙橋雅也/著  著者は小4で詩作を始め、20歳で結婚し21歳で父親となりましたが、26歳で筋ジストロフィーと診断されました。病気が進行し、「歩けなくなって本当に良かった」と言える生き方からは、何かを失うことで何かを得ることができることや、よりこころを自由にもち、様々なことに挑戦することの大切さを教えてくれます。       産声のない天使たち(朝日新聞出版 2018) 深澤友紀/著  妊婦健診で順調だと言われていたにも関わらず緊急帝王切開で出産し、脳性小児まひの障害が残った子どもを持つこととなります。妊娠、出産の様々な形をあらわした内容です。無事に生まれてこれなかったわが子との対面により、暗闇に迷い孤独な思いをしている人も存在します。この本から、いのちの誕生は奇跡の連続であること、様々な思いをもつ人の支えになれる、そのような保健福祉専門職をめざしてほしいと思います。     真壁五月先生の読書ノート 看護研究・看護実践の質を高める文献レビューのきほん(医歯薬出版 2013) 大木秀一/著  文献とは何か、から始まり、文献レビューと文献検討の違い、文献レビューの方法などがわかりやすく説明されています。課題設定→文献検索→内容検討→文献統合→論文執筆の5つのステップで解説されているため、文献レビューをはじめる看護学生の皆さんにもお勧めの1冊です。   患者さんのサインを読み取る!山内先生のフィジカルアセスメント 症状編(エス・エム・エス 2014) 山内豊明/解説  学生時代には、受け持つ患者さんの疾患名から予測される症状を観察項目として挙げ、日々確認する方法を学びます。本書では逆に、患者さんに今現れている症状(例:頭痛、胸痛、呼吸困難)から、患者さんに何が生じているのかを推論し確認していく過程が解説されています。図や絵を多く用いたわかりやすい構成となっていますので、看護学生・新人看護師の皆さんにお勧めです。       出雲のあやかしホテルに就職します(双葉文庫 2016) 硝子町玻璃/著  幼い頃から「あやかし」の見える主人公は、就職活動にことごとく失敗する。そこで大学の就職支援センターから紹介されたのが、幽霊が出るといういわくつきの出雲のホテル。実は神様や妖怪がやってくるホテルであった……。自分とは異なる姿・考え方のお客様を受け容れ、癒し、幸せな気持ちで帰っていただけるよう、主人公たちが奮闘する。看護の心につながる、笑って泣けてほっこりする1冊。ちなみに私は白玉(兎の妖怪)ファンです。     赤田いづみ先生の読書ノート 苦しかったときの話をしようか ビジネスマンの父が我が子のために書きためた「働くことの本質」(ダイヤモンド社 2019) 森岡毅/著  本書は、マーケターの著者が大学生になった我が子に宛てて書きためてきたものです。大学生が就職やキャリア形成について考えていく上でとても参考になる本です。自分の強みを知る方法も書かれており、それを活かして自身をマーケティングしていく考え方はおもしろく、これから自身の就職先やキャリアについて考える際に役立つと思います。         最強脳 『スマホ脳』ハンセン先生の特別授業(新潮新書 2021) アンデシュ・ハンセン/著、久山葉子/訳  本書は、ベストセラーとなった「スマホ脳」を書いた著者により書かれた本です。最初はそのタイトルで「読むと最強脳の作り方がわかって頭が良くなるかも……」などと淡い期待を抱き手に取りました。著者は精神科医であり、各章にドクターの処方箋という欄があるのですが、結論を言うと、とにかく運動をすることが最強脳を作るということです。賢くなるためにも、健康のためにも、運動を習慣づける動機となる1冊だと思います。         TIME SMART お金と時間の科学(東洋経済新報社 2021) アシュリー・ウィランズ/著、柴田裕之/訳  いつも時間に追われて生活をしてどうにかならないかと考えていた矢先にこの本に出逢いました。時間とお金の関係について書かれており、「タイム・イズ・マネー」ではなく「マネー・イズ・タイム」を目指すことなど、目から鱗が落ちるような内容でおもしろく読み進めることができます。タイム・リッチになるための方法についても書かれています。学生のうちから時間について考え、有効に使う習慣をつけるためにも本書をお薦めします。           丸山純子先生の読書ノート 発想の整理学 AIに負けない思考法(ちくま新書 2020) 山浦晴男/著  IT技術の急速な進展や環境変化などにより社会の先行きは予測困難になり、不確実性、不透明を増している現在。このような「社会のVUCA化」(「Volatility:変動性」「Uncertainty:不確実性」「Complexity:複雑性」「Ambiguity:曖昧性」から成る造語)が進んでいる中、まさにこれらの「混沌とした実態」を捉え、深く考え、誰もがもつ能力を最大限に引き出すことができる発想法について分かりやすく記述されています。山浦先生の穏やかな語りかけが聞こえてきそうな1冊です。       最強の経験学習 ハーバード大卒の教授が教える、コルブ式学びのプロセス(辰巳出版 2018) デイヴィッド・コルブ、ケイ・ピーターソン/著、中野眞由美/訳  「経験学習の理論」を提唱したデイヴィット・コルブらが記した、私たちの中に眠る学びの力を呼び覚ますための指南書となる1冊です。本書を読むことで、「人生の一瞬一瞬の経験から学ぶ能力」に気づくことができ、これまで意識せずに経験してきた日々を内省し、行動する学習サイクルの原動力を獲得することができると思います。そして学習の柔軟性にも視野が広がり、ありのままの自分として表現することが可能になります。   ハレルヤ!(新潮文庫 2021) 重松清/著  「いま、幸せですか ?」1980年代を駆け抜けた伝説のロックバンドRCサクセションのキヨシローの死をきっかけに、46歳で再会した学生時代のバンド仲間5人の物語です。日常のざらつきや映像あふれる重松氏の文章に加え、トロンボーンやトランペットのバンド演奏、キヨシローのシャウトまで聞こえてくるライブ感満載の1冊。何十年経っても、ラジオから流れる音楽一つで学生時代の気持ちが呼び起されます。ぜひ手に取ってみてください。           吉田美穂先生の読書ノート そして、バトンは渡された(文春文庫 2020) 瀬尾まいこ/著  大人の都合に振り回される優子が主人公の小説です。優子には母親が2人、父親が3人います。最後(?)の父親となる森宮さんの発言や行動が独創的で笑えます。しかしながら、森宮さんが優子を想う気持ち、言葉にグッときます。親子、友達、先生と生徒、色々な関係の中で優子がぶれずに生きていく様子に元気をもらいます。       看取り先生の遺言(文春文庫 2016) 奥野修司/著  宮城県で在宅医療に力を注いだ岡部健医師のことを取材しまとめられたものです。岡部医師は自分自身が胃がんを患い、ケアする側からケアされる側なり、「死」がリアリティをもって迫ってくる様子を包み隠さず語っています。がんを発症後、東日本大震災を経験し、自身の死生観が大きく変わったこと、現代の医療に対する思いなどを語っておられ、ここまで徹底的に療養者へ向き合う医師がいるのかと驚きました。『人間、死ぬも生きるも自然現象で、医者が口出しすべきことではない』という言葉がとても印象的です。一度読んでもらいたい1冊です。     対話と承認のケア ナラティヴが生み出す世界(医学書院 2020) 宮坂道夫/著  宮坂先生は、医療倫理、ナラティヴ・アプローチの教育研究者であり、本書は第15回日本医学哲学・倫理学会学会賞を受賞されました。ナラティブとは、直訳すると『物語』であり、私たち一人ひとりが主体となって語る物語といわれています。本書では、ナラティブ理論には「実在論」と「構築論」があるという仮説のもと、どちらのアプローチも「個々の患者の健康上の問題解決」を目的としていることを述べています。患者の話を聞くということは、とても力が必要であるということを自覚させられます。読み応えがある1冊です。     西川由貴子先生の読書ノート NICUのちいさないのち 新生児集中治療室からのフォトメッセージ(メディカ出版 2011) 宮崎雅子/写真、ネオネイタルケア編集室/編  医療・看護に携わっている医療従者の力や見守る両親の温かい言葉に、小さなからだで必死にこたえようと頑張っている新生児の姿は、生きる意味を教わるようで、元気づけられます。一枚一枚の写真には、赤ちゃんの力強く輝いている姿が満ち溢れて、命の尊さを感じることができます。これから看護師として出会う多くの命に触れる前に、命のスタートラインを懸命に生き抜いている赤ちゃんに出会って欲しい。     大切な人ががんになったとき… 生きる力を引き出す寄り添い方(青春出版社 2018) 樋野興夫/著  もし、大切な人が、がんになった時に、どう寄り添えばよいのかが、いろいろな側面から書かれています。がん告知を受けた人にとって、心の拠り所となるため、患者・家族が必要としていること、何かがみえてきます。「誰にでも必ずある自分に与えられた役割を見つけ、それを着実にはたしていく。それが尊厳であり、自分らしく生きることでもある」と書かれたことばには、健常者にもいえることであり大いに共感できます。使命感をもって命があるかぎり生きる大切さに触れてみませんか。       恋するきみたちへ。 ちっちゃい先生からのメッセージ(ふくろう出版 2006) 上村茂仁/著  性に対して悩みをもっていても周りに相談しにくい状況がある。女の子、男の子、お母さんやお父さんのそれぞれの立場や目線で、本音が語られています。自分の身体を守れるのはあなた自身、そして子どもを守るのは大人の責任、そう思わせてくれる本です。著者の上村茂仁医師は、診療にあたる傍ら、学校での性教育にも積極的に携わり、少しでも君たちの生き方に、気持ちが楽になったらいいと願いつつ、この本を書かれています。     平田知子先生の読書ノート はずれ者が進化をつくる 生き物をめぐる個性の秘密(ちくまプリマー新書 2020) 稲垣栄洋/著  わかりやすく優しい語りで、雑草の生態や生存戦略を通じて、生物の進化と多様性について説明されています。そこからさらに、ヒトもまた生物の一つであることから、人間の多様性、本当の意味での個性や生きるということについて述べられています。筆者の人柄や植物学者としての姿勢が伝わってくる内容です。ボリュームも少なく、かみ砕いて説明されているのでさらっと読めますが、改めて考えさせられることがたくさんありました。         すばらしい人体 あなたの体をめぐる知的冒険(ダイヤモンド社 2021) 山本健人/著  タイトルの通り、人体の面白さ素晴らしさについて外科医の視点から語られています。人体についてだけでなく医学の奥深さについても知ることができます。本書は5つの章で構成されています。5章では、実習や演習で使用している身近な医療機器の由来が説明されています。パルスオキシメーターの由来や赤血球が赤くみえる理由についてはぜひ読んでもらいたいと思いました。         ママは悪くない! 子育ては“科学の知恵”でラクになる(主婦と生活社 2016) NHKスペシャル「ママたちが非常事態!?」取材班/監、ふじいまさこ/著  コミック・エッセイですが、産後のママたちの子育てのしんどさ、イライラ、不安な気持ち、孤独感などがホルモンの作用など科学的な実験結果などから語られています。堅苦しくないので、将来、母や父になる人はもちろん、子育て中の方まで是非読んでもらいたい内容です。なるほど!と思う視点で産後の生活をイメージしやすい内容になっています。           宮武一江先生の読書ノート 樹木希林120の遺言 死ぬときぐらい好きにさせてよ(宝島社 2019) 樹木希林/著  女優の樹木希林さんが、生前、数多くの「メッセージ」を残されています。その中から生・老・病・死などの普遍的なテーマを中心に言葉を厳選され編んだ1冊です。固定観念や常識にとらわれない、どんな困難も「栄養」とする考え方から紡がれた言葉は、これからの人生のヒントを与えてくれる1冊となると思います。   やめてみた。 本当に必要なものが見えてくる、暮らし方・考え方(幻冬舎文庫 2019) わたなべぽん/著  この本のテーマは「やめてみる」です。生活の中で「なんとなく使っている物」や「もやもやする考え方」などをやめてみたという話です。著者は炊飯器やテレビなどの家電、ファンデーションや個性的な服などをやめていくことで、生活環境が整理され、心と体、考え方まで変化していったという体験談です。やめることで本当に必要な物が見えてくるのかもしれません。第1~3弾までありますので是非読んでみてはいかがでしょうか。   大家さんと僕(新潮社 2017) 矢部太郎/著  カラテカ矢部太郎さんの描かれた3冠受賞のエッセイ漫画です。読んだことのある方も多いかと思います。高齢な大家さんの住むアパートの2階に住み、最初は大家さんとの距離感に戸惑いを感じていた著者でしたが、徐々に大家さんと居ることが日常となり、大家さんの自虐的な会話など、クスッと笑えてほっこりする漫画です。心が疲れた時、ホッと一息つきたい時などに手にとって読みたい1冊です。           中川彩見先生の読書ノート サクッとわかるビジネス教養 行動経済学(新星出版社 2021) 阿部誠/監  行動経済学を知ることでマーケティング、マネジメント、自己実現に役立つそうです。行動を変えるのは、思うようにいかないことも多いと思います。行動経済学の知識は、人生において欠かせない意思決定の際のより良い選択、決定のヒントになります。どの職種、職業においても、行動経済学の知識は応用できると思いますので、それぞれが専攻する学問以外にも目を向け、知見を広げるきっかけにつなげてみてください。       人は話し方が9割 1分で人を動かし、100%好かれる話し方のコツ(すばる舎 2019) 永松茂久/著  話し方で得している人は、特別なことはほとんどやっていない、「ほんのわずかな違い」を手にしているだけだそうです。その「ほんのわずかな違い」である口癖や習慣を手にするためにも、是非手に取ってみてください。わずかな違いの積み重ねが、今後社会に出た時、大きな違いになっているかもしれません。これから先、老若男女様々な出会いがあると思いますが、対人関係を構築していく際のヒントになれば嬉しいです。   シンプルに人を動かす 5W1Hマネジメント(すばる舎 2021) 渡邉光太郎/著  5W1Hは英語の授業で耳にしたことがある言葉だと思います。ただし、会話(説明)をする中で5W1Hを意識していますか?この本は、企業のリーダー(プレイングマネージャー)向けのマネジメントに関する内容のものですが、教養や思考力、社会性を育むきっかけになると思います。リーダーからプレイヤーに向けられるシンプル、パワフル、ポジティブな問い(言葉)について事例形式で紹介されているので気になるchapterから読んでみてください。           井上弘子先生の読書ノート SDGs見るだけノート(宝島社 2020) 笹谷秀光/監  SDGs「持続可能な開発目標」のポスターを多くのメディアで見かけます。では、実際にどんなことをしている?この本では、国の取組みや課題、企業・自治体の取組みがイラストを中心にビジュアルから学べる構成となっています。巻末には自分もできるSDGsとして「ナマケモノにもできるアクションガイド」がついています。紙の使用を減らす、プラスティックをリサイクルするなどもSDGsの取り組みのひとつです。アクションを起こしてみませんか。       感染症の日本史(文春新書 2020) 磯田道史/著  感染症を抑え込むためには医学・薬学・疫学を活用して今後を見据えた対応が求められます。この本は視点を変えて、歴史に目が向けられています。これまでも日本には様々な細菌やウィルスが襲ってきました。スペイン風邪では多くの死亡者がでましたが、人間はそのウィルスの脅威を乗り越えてきたからこそ現在があります。過去の感染症蔓延時の成功や失敗した歴史から感染症を知ることも、未来を考える対策に繋がると思います。         「ユマニチュード」という革命 なぜ、このケアで認知症高齢者と心が通うのか(誠文堂新光社 2016) イヴ・ジネスト、ロゼット・マレスコッティ/著、本田美和子/日本語監修  ユマニチュードとはケアを通して、「あなたはここにいます」「あなたは大切な存在です」とその人が唯一の存在であることを伝え、その人は自分が尊重されていると感じることができる哲学です。興奮していた患者が落ち着き笑顔を取り戻し、ケアを受け入れることができるなど、著者が患者へユマニチュード用いた事例が多く紹介されています。お互いが心を通わせ、存在を認めることにもつながります。気持ちが楽になる1冊です。           小林匡美先生の読書ノート わたしのげぼく(アルファポリス 2017) 上野そら/作、くまくら珠美/絵  ねこの目線から書いてある大人向けの絵本です。飼い主である少年をねこは下僕と呼んでいます。下僕が4歳のときにねこと出会い、18年間をともに過ごすまでの話が書かれています。普段のねこあるあるに共感でき笑ってしまったり、ねこと下僕のやりとりに感動させられました。心癒される絵本だと思います。   朝が来る(文春文庫 2018) 辻村深月/著  小説のテーマが不妊治療や養子縁組とやや重いテーマですが、家族というものを考えさせられる小説でした。血のつながりがある家族、血のつながりがない家族、それぞれの家族の在り方や思いがうまく書かれていて、「家族」とはなにかを問われている作品ではないかと思います。重いテーマですが最後は希望に満ちていて感動する作品です。       解きたくなる数学(岩波書店 2021) 佐藤雅彦[ほか]/著  数学を日常生活の中で使用し、生活のなかでいかすことはほとんどないのですが、この本では日常生活で使える数学の考え方がたくさん出てきます。本来数学はこうあるべきなのではないかと思いました。数学をもう一度勉強してみたくなる本です。             安藤亮先生の読書ノート エンド・オブ・ライフ(集英社インターナショナル 2020) 佐々涼子/著  その人らしく最期まで生ききることを支える、教科書をはじめ様々な書籍、あるいは最近は新聞でも目にするようになった言葉であると思います。では、それを実際に行うとはどういうことなのか、私たちはどのように人生の最終段階にある方に関わればよいのかについて、本書を通して様々な示唆が得られることと思います。       白い犬とワルツを(新潮文庫 1998) テリー・ケイ/著、兼武進/訳  妻に先立たれた高齢者サムとその家族や友人など周りの人々、そしてある日彼の前に現れる白い犬の物語。20年以上前の作品ですが、親しい人の死や主人公の夢を通じて描かれているテーマは現在においても考えさせられる内容であると思います。   これから論文を書く若者のために 究極の大改訂版(共立出版 2015) 酒井聡樹/著  いわゆるハウツー本です。すべてを鵜呑みにする必要はないかと思いますが、卒業研究等で論文を書く、研究成果をまとめる際に何を、どう書いていくか、どうすれば人に伝わるかが端的に書いてある本であると思います。査読結果への対応等、やや大学院生向けの部分もありますが、今研究に取り組んでいる方、あるいはこれから研究に取り組む予定の方、どちらにも一読する価値はあるのではないかと思います。         長崎恵美子先生の読書ノート 命をくれたキス 「車椅子の花嫁」愛と自立の16年(小学館文庫 2004) 鈴木ひとみ/著  著者の鈴木ひとみさんは19歳でミス・インターナショナル準日本代表に選出され、その後モデルとなり、CMやショーで活躍する最中、22歳の時に交通事故で下半身不随となってしまいました。車椅子生活になり将来を悲観した日もあったが、懸命なリハビリを重ね、社会復帰、そして結婚されました。「車椅子の花嫁」としてマスコミで話題になり、スポーツへの挑戦、家事、そしてバリアフリーアドバイザーとして講演に全国を周り活躍する彼女の懸命に生き抜いた壮絶な16年を綴った話です。人生について考えさせられる1冊です。   アルジャーノンに花束を(ハヤカワ文庫 2015) ダニエル・キイス/著、小尾芙佐/訳  2015年に山下智久さんがドラマの主演をつとめたことでも知られています。主人公のチャーリイ・ゴードンは32歳ですが、知的障害のため6歳児程度の思考力しかありません。彼はパン屋で地道に働きながらも賢くなりたいと常に願っていました。ある時、チャーリイは知能を向上させる手術の臨床試験被験者に選ばれました。動物実験によって賢くなったハツカネズミ「アルジャーノン」に感動したチャーリイは、脳手術を承諾し、実験によってみるみる頭が良くなるのですが……。実験がもたらしたのは、よいことばかりでなく、知能があがることで見えてしまった世界。たくさんの悩みを抱えている人に勧める1冊です。   八日目の蝉(中公文庫 2011) 角田光代/著  主人公の希和子は不倫相手の子供を身ごもるが中絶、その後、不倫相手の娘を衝動的に誘拐してしまいます。母と娘は本当の親子のように暮らし3年の月日が経った時、ある理由で逮捕されてしまいます。そして娘のその後の人生も描かれています。最悪の犯罪を犯した希和子、同情してはいけないが同情せずにはいられない何かがあります。愛とは何かについて考えさせられる本です。           髙尾緑先生の読書ノート 働かないアリに意義がある(中経の文庫 2016) 長谷川英祐/著  アリの巣の中には2割程度働かないものがいる。ただしそれらの一見厄介者に見える者たちは、いざという時に働きアリに変身するという特性を持っており、その2割のものによりアリの巣の組織が保たれているという一面がある。         学校の「当たり前」をやめた。 生徒も教師も変わる!公立名門中学校長の改革(時事通信社 2018) 工藤勇一/著  目的と手段を取り違えない、上位目標を忘れない、自律のための教育を大切にするという考え方をもとに今までの学校の常識を見直していく学校運営。           人生がときめく片づけの魔法(サンマーク出版 2011) 近藤麻理恵/著  ときめくものだけに囲まれて、家の中が片付くと人生も変わってくる。             難波香先生の読書ノート 病院というヘンテコな場所が教えてくれたコト。2 看護師4年目、もう辞めたい……編(いろは出版 2020) 仲本りさ/著  現役看護師イラストエッセイの第2弾。今回は著者が看護師になって4年目のエピソードです。仕事も一通りできるようになり、後輩のフォローといった責任も増えるなかで、新人の頃とはまた異なる苦悩を抱えています。患者さんの絶望的な言葉を受け止めきれずに「もう辞めたい」と思い悩みながらも、患者さんの言葉に救われ、励まされたことを思い出しました。最後まで読み終わった後、カバー裏までぜひ目を通してみてください。   わたしたちの暮らしにある人生会議(金芳堂 2021) 西智弘/編著  皆さんのなかで、病気や怪我などもしものときに備えて、ご家族と話をしたことがある人はどれくらいいるでしょうか。前半は、アドバンス・ケア・プランニングの背景や歴史について分かりやすく解説されており、後半は非医療者も含めた「自分が経験した人生会議のものがたり」が綴られています。「もしバナゲーム」「最後の晩餐練習帳」など、楽しみながらも会話ができるツールも紹介されているので、ぜひ参考にしてみてください。   まいにちが、あっけらかん。 高齢になった母の気持ちと行動が納得できる心得帖(つちや書店 2019) なとみみわ/マンガ、佐藤眞一/監  「言った言わないが多い」「プライドが高すぎる」「家の中に物をため込みすぎる」など、高齢者の言動を老年行動学の専門家が科学的に解説しています。著者と母・姑とのエピソードが漫画で紹介されており、手に取りやすい内容だと思います。これまで理由がわからず困ったり、イライラしていた言動が、この本を読んで理解・納得できることで、高齢者の見え方や家族との向き合い方が変わるきっかけになればと思います。           西村美紗希先生の読書ノート おしまいのデート(集英社文庫 2014) 瀬尾まいこ/著  本のタイトルを見た時は、会えなくなる人たちの物語なのかと思ったが、読んでみると違っていた。いろんなデートが描かれた1冊となっていて、クスっとするような場面もあったり……。5つの短編集ですが、それぞれ一癖あり、読みやすいため、ぜひ手に取ってみてください。   エンド・オブ・ライフ(集英社インターナショナル 2020) 佐々涼子/著  様々な患者を看取ってきた一人の男性看護師が、自らの“死”をどう受け入れていくのかが描かれている1冊。人生をどう綴じていき、どのような生きざまをたどるのか……そして、「命を閉じ方」を考えていく。在宅や人生の最期を支えていくものにとって、どのように関わっていくのかも考えさせられる1冊です。       あっ!そうなんだ!性と生(エイデル研究所 2014) 浅井春夫[ほか]/編著、勝部真規子/絵  子育てをしていて、子どもから性に関する疑問を投げかけられることも少なくない。いつから性教育を始めていくのか悩む親も多い。この本は、カラダの仕組みや命の誕生の仕組み、自分を守っていくための知識など、子どもと学んでいけます。保護者向けの解説もあるため、子どもと一緒に性教育について学びなおすことのできる1冊です。         大島由美先生の読書ノート はじめての訪問看護 おさえておきたい心がまえと仕事術(中央法規出版 2019) 日本訪問看護財団/編  訪問看護師の仕事をこと細かく書かれていますので、訪問看護に興味をもったらぜひ一読していただきたいおすすめ本です。心構えやマナーなど含め、実際の場面に即した具体的な訪問看護の活動などが書かれており、訪問看護師の魅力がいっぱいつめ込まれている1冊です。   がんばらない(集英社文庫 2003) 鎌田實/著  世界に貢献する日本人30人に今年選ばれた、鎌田實医師のベストセラーのこの本は、何年経ってもまた読み返したくなる本です。地域医療に尽力され著者の生と死との向き合い方を読んで涙し、医療者として人と関わるというのはこういうことなんだと教えてくれます。心の健康について熱く考えさせられるおすすめの1冊です。   夢をかなえるゾウ(飛鳥新社 2007) 水野敬也/著  このゾウとはインドの神様であるガネーシャが、さまざまな教えを関西弁で面白おかしく会話が繰り広げていきます。楽しく読みながらいろいろな悩みに対して思考力を変えてくれる自分磨きにお勧めの本です。ドラマ化もされた有名な本で1~4巻まであります。ガネーシャというインド料理店も多く、ぜひ読んでみてください。               健康保育学科 岡本直行先生の読書ノート 街場の芸術論(青幻舎 2021) 内田樹/著  芸術の基礎となる「表現の自由」「言論の自由」「民主主義」について考察し、アーティストやその作品を「ウチダ的視点」で読み解いた1冊。表現の自由を認め合うことの重要性やそのような場を希求し信じあうことによって、「作品は命を吹き込まれる」ということを認識できます。掲載されているアーティストの作品を知っておくとより楽しめる1冊です。   「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考(ダイヤモンド社 2020) 末永幸歩/著  本全体の流れが美術学校の授業を学んでいるかのようで面白いです。アートだけでなく、世の中をアート思考で見ることによって、常識や正解にとらわれず、自分の興味関心を元にした、自分なりの見方や探求の実践することのよさに気づくことができます。物の見方はこれほどに豊かであり、自分で考えることの価値について実感できる1冊です。         斎藤健司先生の読書ノート 人類は感染症とともに生きていく 学校では教えてくれないパンデミックとワクチンの現代史(羊土社 2021) ミーラ・センティリンガム/著、石黒千秋/訳  人類は、ペスト、天然痘、結核、エボラウイルス病、SARSなど、さまざまな感染症と戦ってきました。細菌やウイルスへの対処法がいくつかわかってきた現代においても、感染症をなくすことはできません。おそらく今後も感染症との戦いは続くでしょう。  本書は感染症の研究者が執筆しています。人類と感染症との戦いの歴史を読みながら、感染症の知識を得ることができます。さらに、非科学的な感染症対策をした失敗例や、うわさやデマに流された人々の失敗例も知ることができます。   超常現象 科学者たちの挑戦(NHK出版 2014) 梅原勇樹、苅田章/著  NHKで放送した「ザ・プレミアム 超常現象」と「NHKスペシャル 超常現象 科学者たちの挑戦」の内容を書籍化したものです。この本で超常現象とは「現在までの自然科学の知見では説明できない現象のこと」と定義しています。  取材班は、幽霊が出る城、臨死体験、生まれ変わり、透視、テレパシー、予知などについて、科学的に調査しています。そこで、わかったこと、わからなかったことが書かれています。  科学リテラシーとは何か、また科学的に考えるとは何かを知ることができる本だと思います。       松本好生先生の読書ノート ~松本がすすめる「アドラー」3部作~ 嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え(ダイヤモンド社 2013) 岸見一郎、古賀史健/著  本書はアドラー哲学のなかで人生の価値観について書かれています。内容は、社会で生きていく上で必要なことのみ書かれていますので、わかりやすいことから、大学生である間に多くのみなさんに読んで欲しい1冊です。           まんがで身につくアドラー 明日を変える心理学(あさ出版 2014)鈴木義也/著、緒方京子/まんが  大学行事で先輩とうまくいかない、友だち関係でもうまくいかないなど、人間関係に行き詰ったらアドラー。読めば、誰でも3日で変われるかも?試してみる価値はあります。           マンガでやさしくわかる アドラー心理学(日本能率協会マネジメントセンター 2014) 岩井俊憲/著、星井博文/シナリオ制作、深森あき/作画  「7つの習慣」のコヴィーや「人を動かす」のカーネギーなどに影響を与えた、いわば「自己啓発の祖」ともいえるアドラー心理学。その基本が一気にわかります。主人公には人気洋菓子チェーンに勤務する由香里、28歳。さあ、アドラーの世界へ。             髙月教惠先生の読書ノート ぐるんぱのようちえん(福音館書店 1966) 西内ミナミ/作、堀内誠一/絵  皆さんが小さい頃に、きっと出会った絵本だと思います。大きな象の“ぐるんぱ”は、大きすぎてどこに行っても働けません。でも、あるお母さんから12人の子どもの世話を頼まれて幼稚園を開き、幸せに暮らします。人には必ず自分を生かせる場所があります。この絵本は、あなたにそう語りかけているのだと思います。   保育の温もり 続保育の心もち(ひかりのくに 2014) 秋田喜代美/著  倉橋惣三は、「温は下から湧き、上から漲る、皆自然である。野に園に溢るゝ自然である。つくりもの、こしらへものゝ温はその真の力を持たない。… 温の人、保育者、春は正に、あなたの、やさしくて強いはたらきを其のまゝに示してゐる」と、言います(『幼児の教育』昭和6年3月)。この本の子どもを見る保育者の目線(確かな見方)に、温を感じることができます。       「保育」の戦後史 幼稚園・保育所の普及とその地域差(六花出版 2015) 松島のり子/著  この本を読むと、戦後の幼稚園・保育所の普及の地域差がよくわかります。幼稚園・保育所の設置状況は、子どもが保育の機会を得られるかどうかの要因です。幼保一元化と言われながら、なかなか一元化にはなりません。すべての子どもが、人間としての人格形成の基礎を培う乳幼児期を、よりよい環境で過ごせるように、この過疎の町新見から、市大連携を通して幼保一体化の充実した保育を発信しないといけないと思います。           梶本佳照先生の読書ノート 大人もおどろく「夏休み子ども科学電話相談」(SBクリエイティブ 2017) NHKラジオセンター「夏休み子ども科学電話相談」制作班/編著  1984年にスタートし、毎年夏休み時期を中心にNHKラジオR1で放送されている人気ラジオ番組『夏休み子ども科学電話相談』の2016年の番組に寄せられた質問とその回答を集めて、さらに、解説や図版を加えたりして作成されています。子どもの鋭い質問にびっくりするとともに、分かったつもりになっていた事柄が実は違っていたということもあり、大変面白く読むことができます。       伝説の謎 事実かそれとも空想か(日経ナショナルジオグラフィック社 2019) パトリシア S.ダニエルズ/著、竹花秀春/訳  伝説として伝わっている場所や都市、人物、書物、物などについて、それが実在したものなのかどうか、実在したのであれば、実際は、どのようなものだったのかについて、歴史と神話が交わるところの、いつまでも色褪せない“伝説”が生まれると書かれています。さて、実際は、どういうことだったのでしょうか。「実はね・・・」と話のネタを作ってみませんか。例:アトランティス、トロイ、アーサー王、ジャンヌダルク、エクスカリバー、ソロモンの指輪、アーサー王の円卓、ジェームズが乗って事故死した車リトル・バスタード、若返りの泉   ビジュアル ホルモンのはたらきパーフェクトガイド(日経ナショナルジオグラフィック社 2021) キャサリン・ウイットロック、ニコラ・テンプル/著、関谷冬華/訳、金子(大谷)律子/監  ホルモンとは何なのか、体のどこで作られて、どのように移動しているのか、どのようにはたらいて、私たちの体にどのように影響しているのか。人生の成長の各段階、生活の場面をとらえて、絵や図を多く使って、直観的にわかりやすく説明してあります。健やかな毎日を送るために、どのようなことに気を付ければ良いかということについても書かれていて大変参考になります。           八尋茂樹先生の読書ノート 泣いたあとは、新しい靴をはこう。 10代のどうでもよくない悩みに作家が言葉で向き合ってみた(ポプラ社 2019) 日本ペンクラブ/編  若い人には若い人なりの悩みがあります。悲観的な人生観を持ったり、孤独感を感じたりするかもしれません。例えば、自ら死を選びながらも一命を取り留めた若者のほとんどが、年を取ってから「あの時、自分はどうかしていた」と言います。年齢を重ねた人は「元若者」です。大人はどうやって心の危機と向き合い、乗り越えようと試みてきたのでしょうか。自分のこれからの人生の指針に影響する事柄が、この本にあるかもしれません。       ニュークリア・エイジ(文春文庫 1994) ティム・オブライエン/著、村上春樹/訳  ロックバンドのエルレガーデンの細美武士さんは、「今、日本にはパーティーが少ないと思う」と言いました。このパーティーとは、みんなで楽しみながら困難を乗り越えてしまおうという比喩です。この本の主人公は奇異な行動をとっているように周りから思われますが、誰かがそこに加わることで、その行動が「真剣に生きること」だと意味づけられ、みんなに理解されていきます。コロナ禍の今、私たちがどう行動すべきかのヒントがここにあるかもしれません。   小田嶋隆のコラム道(ミシマ社 2012) 小田嶋隆/著  学生のみなさんがレポートや論文の指導を受けるように、私たち教員も学生の頃は文章の書き方を勉強しました。例えば、私は、「誰が読んでもすぐに理解できる文章を心がけなさい」とご指導をいただいたことがあります。小田嶋隆さんが書いた「コラム道」という本があります。レポートや論文とコラムは違いますが、文章を書くことの土台は同じです。すっきりとしていて、さらには読者をひきつける文章を書くコツがこの本にたくさん書いてあります。           芝﨑美和先生の読書ノート ルールはなぜあるのだろう スポーツから法を考える(岩波ジュニア新書 2008) 大村敦志/著  本書では、父と子の対話の形で、スポーツといった切り口から、ルールについての様々な見解が分かりやすく述べられている。スポーツにしろ何にしろ、自分が身を置く集団や社会に積極的に関わり、自らルールの意味を考え、よりよいルールを求めるといった意識づけこそが、法教育に繋がるという考え方には共感できる。ルールや慣習に興味のある方に是非読んでもらいたい。   新編 普通をだれも教えてくれない(ちくま学芸文庫 2010) 鷲田清一/著  普通とは何か。私自身も考えたことがある。本書では、哲学者ならではの視点から、日常の様々な事柄について語られている。「普通」はどこにあるのかを考えたい方、是非ご一読を。     渡部昌史先生の読書ノート 二重螺旋の誘拐(宝島社 2013)喜多喜久/著  頭の中で想像する世界が、次から次へと変更されます。読後の充実感、さらに本の、言葉の、想像の面白さを味わってみてください。           リボルバー(幻冬舎 2021) 原田マハ/著  錆びついた一丁の拳銃、リボルバーが、小規模なオークションハウスに持ち込まれる。そこから2人の画家とそのつながりのある人たちを通して、幸せ、人生、愛、才能、苦悩など多くの事を考えさせてくれる。一人の人間として、どのようにこれから生き抜いていくのか。生きるという大きな海原の航海をしている皆さんに、是非、手に取ってみてほしいと思う。     広瀬綾子先生の読書ノート 演劇入門 生きることは演じること(集英社新書 2021) 鴻上尚史/著  デジタル化の時代にあって、生身の身体や自分の声を使って表現する。自分ではない人になってみる。自分ではない人の人生を生きてみる。創作の過程ではいろいろなことが起こる。ときには意見が割れたり、仲間とぶつかったり。それでも、互いを尊重し、認め、刺激し合って切磋琢磨するなかで、自分や仲間の本質が見えてくる。演劇は、大事なことを気づかせてくれると同時に、日々をよりよく生きるヒントや、新しい自分を発見する手がかりに満ちています。   モモ(岩波書店 1976) ミヒャエル・エンデ/作、大島かおり/訳  時間どろぼうと、ぬすまれた時間を人間にとりかえしてくれた女の子モモのふしぎな物語。人間本来の生き方を忘れてしまっている現代の人々に、<時間>の真の意味を問う、ドイツの児童文学作家、ミヒャエル・エンデの名作。             加藤由美先生の読書ノート まんがでわかる 自己肯定感を高めるハーバード式ポジティブ心理学(宝島社 2020) 成瀬まゆみ/著、前山三都里/まんが  いつも“できない自分”にダメ出しをして“もっと頑張らなければ”と自身を追い込んでいるあなた!この本は、自己肯定感や幸福感を高めるための「ポジティブ心理学」の重要トピックが満載で、とにかく読みやすい(何しろ漫画入りなので)。「一人の幸せが世の中を幸せにする」という壮大な夢の実現に向けて、まずは、あなたの一歩から……。実践ワーク付き。       これだけは知っておきたい 保育者のためのカウンセリングマインド入門(チャイルド本社 2007) 佐川寛子、成瀬美恵子/著  日常の保育現場で起こるできごとや、保護者・職員との関係、保育者自身の気持ちなど、カウンセリングマインドが必要なエピソードを取り上げて、それぞれに適したワークが紹介されている。子ども、保護者、そして自分自身の声を「聴く」ための一助になるはず。       こどもはおもしろい(講談社+α文庫 2005) 河合隼雄/著  「すぐに先生が正しいことを『教えたがる』のはダメ」「マジメ一辺倒では、子どものよさを引き出す教育はできない」「子どもの個性を引きだすには、先生の個性が生かされていることが第一の条件」といった言葉が印象的。今は亡き著者(臨床心理学者)と画家の安野光雅氏など個性的な方々との対談集。先生のあり方について考えさせられる。     立浪朋子先生の読書ノート 叶恭子の知のジュエリー12ヵ月(理論社 2008) 叶恭子/著  わたくしは自分の価値観で生きています。たとえ、そのことによって、誰からも好かれないとしても、かまわないのです……。叶姉妹で知られる叶恭子さんの数々の名言と、悩み相談への素晴らしい回答が読めます。中学生くらいの年齢を対象にしている本なので、大学生には少しおかしく感じる相談かもしれません。トイレに一緒に行ってくれる友達がいないです、とか。悩める後輩たちに、皆さんならどう答えてあげますか。恭子さんの回答は相手の尊厳を大切にしながら強く凛々しく、大人が読んでも励まされます。     「赤毛のアン」シリーズ(文春文庫 2019~) L・M・モンゴメリ/著、松本侑子/訳  松本侑子さん翻訳による赤毛のアンシリーズ。このシリーズの魅力は訳注です。赤毛のアンの物語の中の、膨大に引用されているシェイクスピアや聖書の言葉をはじめ、欧米文化の理解を深めてくれる歴史、食べ物、衣装、さらには宗教、民族、当時の思想などに関する詳細な訳注は、それだけを読んでいても非常に面白いです。訳者が20年以上の歳月をかけて調べ上げた情報を一冊数百円、数日で得られてしまうのですから、本ほど安いものはない、と実感します。     戦争中の暮しの記録(暮しの手帖社 1969) 暮しの手帖編集部/編  戦争時代の生活の記録を出版社が一般読者から募り、一冊の本にしたもの。集団疎開の小学生は、親から食べ物を送ってもらうのは禁止だったので、お手玉を送ってもらった。疎開先ではいつも空腹。お手玉の中には大豆が。便所で弟とこっそり食べたそう。やはり集団疎開の話で、食べ物が駄目なので薬を送ってもらう。特に「梅肉エキス」が美味しかった。豊かな時代の大人になった作者が試しに口にしたら、とても酸っぱく感じたとか。以前、あるテレビ番組で梅肉エキスが健康に良いと紹介されていました。翌日ドラッグストアで梅肉エキスを探す人が。私はまだ食べたことがないです。皆さんはありますか。   メンタル強め美女白川さん(KADOKAWA 2020~) 獅子/著  「自分のこと可愛いと思ってるよね」「あなたいつか絶対大きな失敗するよ」白川さんは毎日のように悪口陰口を言われる存在。その原因は白川さん自身にある……なんて、全く思ってない白川さん。どんな批判も華麗にスルー。「おはようございます!」と笑顔で一日を始めます。みんなに嫌われてる気がするとか悪口言われてる気がするとか感じることがあれば読んでみてください。気にするのがアホらしくなります。それより美味しいケーキを食べたり新作プチプラコスメを試したり応援しているサッカーチームの試合結果をチェックしたり人生にはやらないといけないことがいっぱいありますから。           本渡葵先生の読書ノート N(集英社 2021) 道尾秀介/著  道尾秀介さんの本は、ミステリー、サスペンスのジャンルに分けられていますが、そこに収まらないモノがどの作品にもあります。デビュー当時から大好きで、ほぼすべての作品を読んできました。  この『N』は、帯にもあるように、720通りの「物語のかたち」があります。手にとってみてください。   女の園の星(祥伝社 2020~) 和山やま/著  女子校の国語教師・星先生と、その学校の生徒たち、クセのある同僚の先生たちの、じわっとくる日常が描かれています。読むと高校生に戻りたくなります。         よつばと!(KADOKAWA 2003~) あずまきよひこ/著  第1巻は2003年に刊行、現在15巻まで世に出ています。主人公のよつばちゃんも、少しずつ成長し、いよいよランドセルを買う時がくるほどに大きくなりました。ふとした「子どもあるある」に、そうそう、そういうことあるよねえ、と思いながら何度も読み返しています。     竹下可奈子先生の読書ノート 決定版 オーケストラ楽器別人間学(中公文庫 2018) 茂木大輔/著  NHK交響楽団首席オーボエ奏者の茂木大輔さんが、奏者の性格と楽器との関係をユーモアたっぷりに分析した本です。初版は1996年に出版されましたが、大幅に修正・加筆されたものが新たに「決定版」として刊行されました。第5章「オーケストラ人間観察編」ではNHK交響楽団の管楽器奏者から実際に聞き取った内容が示されており、プロ奏者の本音が垣間見えて楽しいです。   ロシアは今日も荒れ模様(講談社文庫 2001) 米原万里/著  ロシア語会議通訳者の米原万里さんのエッセイ本です。1980年代から2000年代初頭までロシア語圏要人の同時通訳などで活躍された方で、この本にもゴルバチョフやエリツィンといったそうそうたる顔ぶれとのエピソードが出てきます。また、ロシア人とウォッカの関係、ロシアのありえないほど汚いトイレの話など、多種多様な切り口でロシアのあれこれについて知ることができます。   春にして君を離れ(ハヤカワ文庫 2004) アガサ・クリスティー/著、中村妙子/訳  アガサ・クリスティーの作品ですが、殺人事件は起きません。探偵も出てきません。本作の主人公は自尊心が高く、優しい夫やかわいい子どもたちのいる幸せな家庭を自身が築きあげたことを誇りに思っています。しかし、偶然会った昔の友人との会話をきっかけに、理想的だと思っていた夫や子供との関係に疑問を抱き始めます。見ないふり、気づかないふりをしてきたものと向き合うことの恐ろしさが描かれています。           久恒拓也先生の読書ノート ドイツの学校にはなぜ「部活」がないのか 非体育会系スポーツが生み出す文化、コミュニティ、そして豊かな時間(晃洋書房 2020) 高松平藏/著  本書ではドイツ文化に触れながら、スポーツに親しむ国民性や諸制度を知ることができる。ドイツの子どもはスポーツをしようとしたときに、部活ではなくスポーツクラブ(シュポルトフェルアイン)に入ることになる。クラブはNPOであり、日本で想起されやすいフィットネスクラブとは異なる。そこでは子どもだけでなく、高齢者や会社員など、学齢期以外の人々も集まる。本書は部活を通してのスポーツ観について再考させてくれる。       専門知は、もういらないのか 無知礼賛と民主主義(みすず書房 2019) トム・ニコルズ/著、高里ひろ/訳  インパクトのある題目の本書。紙幅の大半は「無知」に関する様々な報告や研究成果の紹介に割かれている。ネットの発達により知識が溢れた現代で、我々がいかにして「無知」になっていくのか、なぜ専門家の助言や見解を誤って利用したり誤解したりするのか等々。専門職になってからの情報摂取・発信に備えての教養書として推薦したい。           入江慶太先生の読書ノート 弥縫録 中国名言集(中公文庫 1986) 陳舜臣/著  突然ですが「破天荒」の意味は分かりますか?「豪快」「乱暴者」だと思ったあなた、それは間違っています。このように、時々目や耳にする言葉であっても、本来の意味とは違った意味で覚えていることがよくあります。この本は104の名言・名句の本当の意味を、歴史を絡めながら分かりやすく教えてくれる文集です。著者は直木賞作家、しかしとにかく読みやすい!では次に……「折檻(せっかん)」の本来の意味は分かりますか?   私が野球から学んだ人生で最も大切な101のこと(海竜社 2011) 野村克也/著  書店で手にとっては元の場所に戻され、買ってはすぐ売られていった自己啓発本の中で、いまだに私の書棚に残っている名著です。101の格言はプロ野球選手や監督として過ごしたエピソードを基に書かれていますが、それ以外の世界にも通じる力を持った珠玉の言葉が並べられています。特に、人間関係や社会の理不尽な出来事に納得いかないときに読むのがおススメです。著者は2020年に逝去されましたが、あなたの本に出会えてよかった!   愛してるよカズ 小児ガンと闘った母親と息子の愛の記録(長崎文献社 2008) 光武綾/手記  小児がんに冒され、7歳でこの世を去ったカズ君の臨終の瞬間まで描かれた手記&DVDです。クラウンDr.であるパッチ・アダムスは「医療は死を遠ざけるために使うのではなく、生の質を高めるために使うものだ」と言っています。自分が今をどれだけ熱く、誠実に、真っ当に過ごしているかをカズ君の生き方が教えてくれる、そんな本です。彼が息を引き取る瞬間にお母さんがとった驚きの行動は、何度見ても胸が締め付けられます。           高橋彩先生の読書ノート おやときどきこども(ナナロク社 2020) 鳥羽和久/著  私塾を主宰する筆者による本書は子どもたちとのたくさんのエピソードがあり、実際の学びの現場の子どもたちの姿がありありと浮かび上がってくる。教育に携わる者として、考えさせれることの多い1冊。           子どもの頃から哲学者 世界一おもしろい、哲学を使った「絶望からの脱出」!(大和書房 2016) 苫野一徳/著  著者である苫野先生が哲学者になるまでの半生を楽しく語っている本。哲学と聞くと難しく感じるが、先生の実体験に基づいて書かれているので楽しくすらすらと読める1冊。   33個めの石 傷ついた現代のための哲学(春秋社 2009) 森岡正博/著  大学生時代に先生からの勧めで読んだエッセイ集。10年経って読み返しても全く色あせない。ふと立ち止まって考えたいときに読むと少し優しい気持ちになれる気がする本。     松島英恵先生の読書ノート じごくのそうべえ(童心社 1978) たじまゆきひこ/作  桂米朝の上方落語『地獄八景』を絵本にしたものです。  軽業師のそうべえが地獄へ落されるのですが、仲間と一緒にどうにか乗り越えます。理不尽な目にあっても、得意技で協力し合って笑いに変えていったら、なんとかなるんとちゃいますか、という勇気をもらえるお話です。     子どもの「お馬鹿行動」研究序説(かもがわ出版 2016) 加用文男/著  道路の側溝の金網に指を入れて抜けなくなり、救急救命隊に助けてもらった小学校高学年男子の話を聞いたことがあります。「馬鹿じゃないの!?」とその話を聞かせてくれた小学校高学年女子が言いました。なぜそんなことを!?ということを子どもはやります。発達心理学者であり、遊びの研究者である加用先生が真剣に子どもの『お馬鹿行動』を分析しています。子どもの行動や遊びには意味がある。安全への配慮は必要ですが、むやみに禁止するのではなく、温かく見守る勇気ももちたいと思います。   愛しの座敷わらし 上・下巻(朝日文庫 2011) 荻原浩/著  一家の主が左遷されて田舎の古民家に引っ越すところから物語が始まります。それぞれに悩みを抱え、バラバラだった家族が、古民家に棲んでいる座敷わらしによって、家族の絆を取り戻していきます。温かくユーモアのあるお話で、心が疲れた時にほっこりと癒されます。     福武幸世先生の読書ノート 実践知 エキスパートの知性(有斐閣 2012) 金井壽宏、楠見孝/編  「インテリジェンスを磨け、内面の美しさが大切だから」 これは大学時代の恩師からいただいた言葉です。知能や知性と訳されるインテリジェンスですが、一体どのように磨いていけば良いのでしょうか。  本書は、教師の実践的指導力である「身体知」の研究で出会えた本です。実践知とは何か、実践知はどのように獲得されるのか、実践知はいかに継承されるのかといった内容も書かれています。最初はみんな初心者ですが、生涯続けていくことで熟達化し、自分の実践知を獲得していきます。本書は、教師以外にも看護師、アーティスト、管理職、営業職、技術職などについても書かれており、エキスパートの知に興味がある方にぜひ読んでいただきたい書籍です。   聞く力 心をひらく35のヒント(文春新書 2012) 阿川佐和子/著  阿川さんの言葉のリズム感と共感力が素敵です。 以下の文章は、35番目のヒントからの一節です。 「人の話はそれぞれです。無口であろうと多弁であろうと、語り方が下手でも上手でも、ほんの些細な一言のなかに、聞く者の心に響く言葉が必ず潜んでいるからです。でもそれが、決して「立派な話」である必要はない。声の出し方、ちょっとした反応、表情、仕草、躊躇、照れ、熱意……。オチもないような下らぬ話の隙間にも、その人らしさや人格が表れていて、そこに共感したくなるような、なにか小さな魅力があれば、それだけでじゅうぶんです。そして、そんな話をする当の本人にとっても、自ら語ることにより、自分自身の心をもう一度見直し、何かを発見するきっかけになったとしたら、それだけで語る意味が生れてきます。」  この本は、自分から話すことが苦手な人にお薦めします。   置かれた場所で咲きなさい(幻冬舎 2012) 渡辺和子/著  渡辺和子さんの強く優しい言葉から、自分も少しずつ頑張ろうという気持ちになれます。本書の一節をご紹介します。 「いい出会いにするためには、自分が苦労をして出会いを育てなければならない。出会っただけでは信頼関係は結べない。「このご縁を大事にしよう」という気持ちを育てていこう。」  また、次のような言葉もあります。 「どうしても咲けない時もあります。そんな時は無理に咲かなくてもいい。その代わりに、根を下へ下へと降ろして、根を張るのです。次に咲く花が、より大きく、美しいものになるために。」  置かれた場所で、人との縁を大切に、自分も周りの人も笑顔の花を咲かせながら過ごしていきたいと思える1冊です。           地域福祉学科 松本百合美先生の読書ノート 落合陽一 34歳、「老い」と向き合う 超高齢社会における新しい成長(中央法規出版 2021) 落合陽一/著  デジタルネイチャー『計算機自然』って何だと思いつつも、介護をテーマにした内容は意外に読めるという気になる本です。「テクノロジーの実装」現実の普及・定着のための方策とのバランスが大きな課題だと個人的には考えていますが、テクノロジーが人の老いに対して「身体機能を補完する」ことは近年急速な発展を遂げています。「情緒的ケアを支えるテクノロジー」については、これからじっくり考えていきたい課題だと思っています。       一汁一菜でよいという提案(新潮文庫 2021) 土井善晴/著  養老孟司氏が最近のお気に入りの本だと紹介された本です。料理研究家である著者が、食事が『心地よい場所に帰ってくる生活のリズムを作ること』の大きな柱と述べています。和食がユネスコ無形文化遺産に登録され、ミシュランガイドからネットのグルメレビューサイトも隆盛ですが、「食は日常」であり調理して食べる家庭料理が基本であると述べられています。料理本として美味しいご飯の炊き方……もありますが、料理本ではない考え方や生活のスタイルに学ぶものが多いなと思った1冊です。     異邦人(PHP文芸文庫 2018) 原田マハ/著  絵画に並外れた審美眼を持つ主人公が、出産を前に東日本大震災後の原発事故の放射能から逃れ、京都に移り住む。京都の四季折々の美しさや、京都ならではのしきたりやこだわりが描かれながら、そこで知り合った無名の画家の作品と出会い、人生が変わっていく。ここまで読んで、篠田節子の「聖域」「贋作師」「ハルモニア」系の小説を期待(笑)してしまいましたが、主人公は夫や両親と決別し、無名の画家と新たな道を生きていくことになります。           岡京子先生の読書ノート 犠牲 わが息子・脳死の11日(文春文庫 1999) 柳田邦男/著  コロナ禍で家族に看取られないまま死に、荼毘にふされた人々がいます。看取れなかった家族がいます。本書は脳死状態の息子に付き添った1995年の手記ですが、「あの11日間があったからこそ、息子は今でも私の中にいる」とつい最近のインタビューで著者が語っておられました。大切な人の死に付き添うこと、身体に触れること、声をかけること、その大切さを改めて思いました。早く日常がもどりますように。       ライオンのおやつ(ポプラ社 2019) 小川糸/著  やはり、死を主題にした小説です。NHKでドラマ化されましたが、視聴して大いに違和感が残りました。そこで小説を読んだのです。ほっとしました。日常の意識しないところで、人は影響を及ぼしあい、その残像はその人の中にとどまる。看取りのケアはその人のこちらの世界から次の世界への旅立ちを助けること、そんな言葉を思い出しました。ちょっと人にまみれて疲れたな……というときに読んでみるといいかもしれません。       女の一生(岩波新書 2014) 伊藤比呂美/著  伊藤比呂美さんといえば、自由奔放、激情のままに……といったイメージを持っていました。そのイメージのままに、しかし、こんなに優しく深い思いを持った人だったのだ……とも思いました。読者の質問に答える形で書かれたエッセイ(?)です。すべての経験は私を太らせてくれている。生きることをドーン!!と肯定してくれます。             山内圭先生の読書ノート 爛々と燃ゆる(Burning Bright)(スタインベック全集8)(大阪教育図書他 1998) ジョン・スタインベック(John Steinbeck)/著  スタインベック研究者として毎年彼の作品を紹介していますが、寅年の今年はタイトルBurning Brightがウィリアム・ブレイク(William Blake)の詩のトラの眼の描写から取った本作を紹介します。これはスタインベックの実験的な作品で小説と演劇脚本の中間的作品です。長所は通常の演劇脚本よりは読みやすいことと、舞台化を想定しているため通常の小説よりも情景を浮かべながら読みやすいことです。   移動祝祭日(A Movable Feast)(新潮文庫他 2009) アーネスト・ヘミングウェイ(Ernest Hemingway)/著 小説 太宰治(小学館 2019) 檀一雄/著  日米2冊の書の同時紹介ですが、前者はヘミングウェイの、後者は太宰治の恋愛や他の作家や芸術家たちとの交流が描かれている小説(小説というより日記に近いかもしれません)です。文学を研究するということは、書かれた作品の分析にとどまるのみではなく、その作品を生み出した作者またはその作者が生きてきた社会や時代を知ることも含みます。研究だけではなく文学の鑑賞も、作家のことを知った方がより楽しくなるものです。     変わったタイプ(Uncommon Type)(新潮社 2018) トム・ハンクス(Tom Hanks)/ 著、小川高義/訳  俳優であり映画監督も務めるトム・ハンクスが2017年に出版した(日本語版は2018年出版)短編集です。様々な映画に出演していろいろな「人生」を生きてきた彼の経験が役に立っているのか、過去から未来の、そしてニューヨークやカリフォルニアそして宇宙までいろいろな場面の作品が収録されています。中で私が気に入ったのは人物の心理描写が秀逸な「特別な週末」(A Special Weekend)という作品です。       ミシシッピ=アメリカを生んだ大河(講談社 2005) ジェームス・M・バーダマン(James M. Vardaman) /著、井出野浩貴/訳  新型コロナウイルス感染症の影響で海外に行けない今、決してその代わりにはなりませんが、外国のいろいろな土地について書かれた書を読むことはおもしろい読書体験となります。この書はアメリカを縦断して流れるミシシッピ川をその河口ニュー・オーリンズから上流に遡る形でたどって各地の歴史などを紹介するものです。コロナ終息後(現役中は難しいから退職後になるでしょうか)ミシシッピ河の船の旅、ぜひ、実現させたいです。       ノマド 漂流する高齢労働者たち(Nomadland—Surviving America in theTwenty-First Century)(春秋社 2018) ジェシカ・ブルーダー(Jessica Bruder)/著、鈴木素子/訳  ネットショッピングの最大手アマゾン、消費者側から考えたら自宅などのPCからクリックするだけで買い物ができるとても便利な「店」です。しかし、よく考えれば気づくように、「店」の倉庫はとてつもなく大きく、各地からの注文を受け、倉庫から発注品を探し配送に回す無数のスタッフが必要なことがわかります。この書はそんな人たちの生活を描くドキュメンタリーです。新たな労働者階級「漂流する高齢労働者たち」のお話です。       武漢日記 封鎖下60日の魂の記録(河出書房新社 2020) 方方(Fang Fang)/著、飯塚容、渡辺新一/訳  2019年12月に中国の武漢で初めて発生した新型コロナウイルス感染症、瞬く間に世界中に広がり今も続く混乱を与えています。この書は、封鎖中の武漢の様子を2020年1月25日(旧暦1月1日)から3月24日までにかけて描いた60篇にわたるブログ発表の日記を1冊にまとめたものです。おそらくカミュの『ペスト』のように、将来COVID-19を振り返る際に読まれる貴重な記録文学作品になるだろうと思われます。   論語と算盤(角川ソフィア文庫他 2008) 渋沢栄一/著  NHK大河ドラマの渋沢栄一を描いた『青天を衝け』に触発され読みました。本書は「正しい道理の富でなければ、その富は完全に永続することができぬ」という一言に集約されると考えられます。社会には様々な悪徳商法が存在していますが、それは決して持続可能なものではありません。経済活動をする場合にも、論語に代表される道徳心が必要であるということです。次は、渋沢が編集をした『徳川慶喜公伝』を読んでみようと思っています。       カムカムエヴリバディ 平川唯一と「ラジオ英語会話」の時代(NHK出版 2021) 平川洌/著  上記の書同様、これもNHKのドラマに触発され読んだ本です。授業で紹介したクラスもありますが、「ラジオ英語会話」の講師平川唯一氏は、お隣の高梁市出身です。また朝ドラ「カムカムエヴリバディ」も岡山を舞台とした話です。ドラマを楽しみながら関連した書も楽しんでみる、悪くはない読書法だと思いますよ。書中では平川氏のラジオに影響を受けた一人として僕の恩師の田崎清忠先生も紹介されていて嬉しかったです。       貝に続く場所にて(講談社 2021) 石沢麻依/著  東日本大震災に遭遇した私は、今ドイツ留学中です。そこに震災で死んだ知人が連絡をくれて会いに来ました。この町では現在と過去が混在することがあり、以前この町に滞在した寺田寅彦も登場します。死んだ人も生きているのです……。混乱しながら読み進めると後で何となく結びつき、そんな不思議な話ではなかったというような読後感です。作者が物語の中に入れ込んだ様々な要素が綿密に結びついていく、そんなお話です。       きよしこ(新潮文庫 2005) 重松清/著  僕も同じ「きよし」としてずっと気になっていたこの作品、昨年ようやく読むことができました。「きよし」という名なら必ず意識するクリスマスソングの「きよしこの夜」、この書のタイトルはそこから来ています。吃音に悩む著者をモデルにした少年が周りの人たちに支えられながら成長していく様子が描かれています。少年期を終え、大人の入り口あたりにいる学生の皆さんに是非薦めたい書です。著者の重松氏は岡山県(津山市)出身です。       謎の蝶 アサギマダラはなぜ海を渡るのか?(ベスト新書 2018) 栗田昌裕/著  皆さんはアサギマダラ蝶という渡り蝶をご存知ですか?これは、夏は北に、冬は南に渡りをする蝶で、秋に南下する際はフジバカマなどの花の蜜を好んで吸うことが知られています。昆虫観察が好きな僕は、3年前自宅の庭にフジバカマを植え昨年10月に初めてアサギマダラの飛来を確認できました。この書は、その蝶の生態について研究者によって書かれたものです。ちなみにアメリカにもオオカバマダラという美しい渡り蝶がいます。   「見る鉄」のススメ 関西の鉄道名所ガイド(創元社 2019) 来住憲司/著  身内びいきではありますが、著者の来住憲司は僕の従兄で鉄道ライターをしています。幼い頃から鉄道好きで、それが高じて鉄道雑誌記事を執筆し、著書も何冊かある業界の第一人者となりました。鉄道を見るということは、単に鉄のレールの上を動く四角い物体を見て写真を撮って喜ぶということではなく、かなり奥の深い世界であることがわかります。電車通学生の皆さん、鉄道で帰省や旅行をする方、ぜひ手に取ってみてください。           山本浩史先生の読書ノート ママがもうこの世界にいなくても 私の命の日記(小学館 2021) 遠藤和/著  著者は21才でステージ4の大腸がんと宣告された。22才で結婚され、どうしても子どもがほしいと抗がん剤治療を止め、23才で出産。2021年9月、24才で亡くなるまで、子どもや夫への思いを記した日記です。           ヤングケアラー わたしの語り 子どもや若者が経験した家族のケア・介護(生活書院 2020) 澁谷智子/編  多様性のあるヤングケアラーの経験を、当事者7人が書き下ろしたものであり、それぞれに「わたしのストーリー」として描かれています。なぜケアをしなければならなかったのか、その思いや社会構造について、考えてみてください。         コロナ禍、貧困の記録 2020年、この国の底が抜けた(かもがわ出版 2021) 雨宮処凛/著  今も続くコロナ禍での社会ですが、2020年の支援現場からの記録であり、新型コロナウィルス感染症による生活・貧困問題を考えさせられる1冊です。感染症が社会や生活にどのような影響を及ぼすのか、そして、この状況に対して、個人の力だけでは、解決することができない問題であることを想像しながら読んでみてください。           和田美智代先生の読書ノート 樹木たちの知られざる生活 森林管理官が聴いた森の声(ハヤカワ文庫 2018) ペーター・ヴォールレーベン/著、長谷川圭/訳  ドイツの森林管理官による森のお話です。牧歌的な話はなく、意表を突く話の連続で、森のイメージが劇的に変わります。たとえば、ブナなどの木は仲間意識が強く、弱った木に栄養を分け合い、根を使って情報交換し、「立場の弱いものも社会に参加できるようにする社会福祉システム」があるというのです。仲間が弱っていなくなると、森にとって好ましい環境が保てなくなるから。人間にも当てはまるのではないかと考えさせられます。       食べる時間でこんなに変わる 時間栄養学入門(講談社 2021) 柴田重信/著  健康と食事の話は「何を食べれば何に良い」という内容を思い浮かべますが、時間栄養学は「いつ食べるのか」という時間を問題にしています。この学問では食行動と、それによって体で起こる時間帯別の反応との関係を科学的に研究しています。「いつ」「何を」「どう」食べるかで体をかえることができるそうです。ダイエットや健康増進のためだけではなく、福祉や医療の現場での食事のあり方を考える契機になるかもしれません。       〔エッセンシャル版〕行動経済学(ハヤカワ文庫 2021) ミシェル・バデリー/著、土方奈美/訳  従来の経済学は、人間を合理的な生き物と考え、合理的意思決定に限界はないとするのに対して、行動経済学は、心理学などさまざまな学問領域で得られる知見を採り入れて、合理性は限定的であり、意思決定にはさまざまな制約があることを明らかにしました。つまり、合理的な考え方と思っているが実はきわめて非合理的な判断に陥るパターンがあることを明らかにしたのです。人間理解の一助として読むと面白いのではないでしょうか。           高杉公人先生の読書ノート コミュニティデザインの時代 自分たちで「まち」をつくる(中公新書 2012) 山崎亮/著  山崎亮氏が、人のつながりを「デザインしないデザイナー」として人と共に描いてきた軌跡を綴った「コミュニティデザイン」の実践書である。本書は、彼自身が手掛けてきた「コミュニティデザイン」プロジェクトの紹介だけでなく、プロジェクトに関わり始めた動機や背景が描かれており、人間としての山崎亮を理解できる内容となっている。       地域福祉とファンドレイジング 財源確保の方法と先進事例(中央法規出版 2018) 宮城孝[ほか]/編  地域福祉活動は基本的にボランティアを主体として、お金を稼ぐべきでは無いという古典的な考え方が残る中、地域福祉にかかわる人々は財源確保が上手ではないという現状がある。その現状を打破する意味で書かれたのがこの本で、ファンドレイジングに必要な知識・方法と先進事例から具体的な手法や工夫が分かり易く紹介されている。   大人のための社会科 未来を語るために(有斐閣 2017) 井手英策[ほか]/著  現代の社会が陥っている閉塞感を打破し、大人が日本社会について希望を持って「いま」と「これから」を語り合うための教科書として書かれた本である。経済、政治、社会をめぐる様々な出来事をその専門家が分かり易い言葉で、多様な視点で解き明かし、最後にこれからの社会に対して希望を持って生きるための一つの道筋を示す内容となっている。     八重樫牧子先生の読書ノート バビロンの流れのほとりにて(筑摩書房 1968) 森有正/著  著者(1911-1976)は哲学者であり、森有礼の孫です。森有正を知ったのは、大学の2年生の哲学の講義でした。その頃、私は自分の内面的な問題で暗中模索をしており、この本と出会うことにより私の人生の基盤が形成されたと思っています。著者は「〈経験〉というものがその一人の人間を定義するのである」と言っていますが、終活準備に入った今、私のこれまでの経験は私をどのように定義しているのか、この著書を読み返しながら考えてみたいと思っています。   大学という理念 絶望のその先へ(東京大学出版会 2020) 吉見俊哉/著  本著は、著者が2010年から約10年間に書いたり話したりしてきた大学論をまとめたものです。著者は、日本の大学の①人口的な危機に対しては「リカレント教育」、②国際競争の激化に対しては複線的な構造への転換、③デジタル知識革命への対応の遅れに対しては「ダブルメジャー」、④教育の質の劣化に対してはカリキュラムの転換を提案しています。大学1年生の時に基礎ゼミでニューマンの「大学の理念」を読んだことや、リベラルアーツである哲学、宗教学などを学んだことの意味や重要性を改めて理解できました。       人新世の「資本論」(集英社新書 2020) 斎藤幸平/著  人新世(ひとしんせい)とは人類たちの活動の痕跡が地球の表面を覆い尽くした時代を著しています。著者は、マルクスの新資料の研究ノートに着目し、「人新世」という環境危機の時代に、資本主義の限界がきているということ、そこで脱成長のコモン型社会に移行していくことが、むしろ豊かな社会に繋がっていくことを具体的に描き出しています。私が大学生だった頃(1960年後半)は、大学生はマルクスの資本論を一度は手にしたものです(私は読み切れなかったけれども)。できたらマルクスの新資料を読んでみたいですね。     三上ゆみ先生の読書ノート 地域とゆるくつながろう! サードプレイスと関係人口の時代(静岡新聞社 2019) 石山恒貴/編著  サードプレイスとは家庭でも職場でもなく、居心地の良い第3の居場所のことを言います。現在居住していないし故郷でもないが何らかのかかわりがある。又はファンになっている地域。地域に対して多様なかかわり、例えば支えて、支えられてという役割りのない関係性があれば、互いに価値のあり存在として居心地の良い場所が出来上がります。大学生の皆さんも新見市の関係人口ですね。   ねこマンガ 在宅医たんぽぽ先生物語 さいごはおうちで(主婦の友社 2021) 永井康徳/著、ミューズワーク(ねこまき)/絵  医療法人ゆうの森は、愛媛県で2000年全国でもほとんど例を見なかった、在宅医療専門クリニックとして、患者様の『楽なように・やりたいように・後悔しないように』を支える医療を展開されています。このクリニックを大好きなイラストレーターの”ねこまき”さんがコミックエッセイで紹介くださっています。こんな看取りを支える人になりたいと思わせてくれる1冊です。       タクシードライバーぐるぐる日記(三五館シンシャ 2021) 内田正治/著  50歳の時、会社が倒産タクシードライバーに転身し15年間の悪戦苦闘をつづったシリーズ本の中の1冊です。人生の経験を積んだのち、多業種に転職をした人の奮闘シリーズでヨレヨレ、ヘトヘト、ヨボヨボ、はらはら等のタイトルに現れているよう叱られ、失敗しながら格好良くはないけれど、頑張るおじちゃん、おばちゃんの姿にちょっと元気がもらえこのシリーズにはまりました。           鄭丞媛先生の読書ノート ポストコロナ時代の「通いの場」(日本看護協会出版会 2022) 近藤克則/編  健康日本21などにおいて高齢者の健康寿命の延伸が目指されている。健康増進・介護予防を促す取り組みとして全国で「通いの場」が展開されてきた。しかし、新型コロナ感染症の拡大により、多くが活動停止を余儀なくされ、高齢者の心身の健康状態への影響が危惧されている。本書では、日本老年学的評価研究(JAGES)と全国の市町村での取り組みの成果をもとに、新型コロナ感染症流行期・収束期においても、地域のつながりを保ち、通いの場事業を進めていく方策を紹介している。     東欧革命1989 ソ連帝国の崩壊(白水社 2017) ヴィクター・セベスチェン/著、三浦元博、山崎博康/訳  ソビエト連邦が崩壊(1991年)してから30年が経った。本書では、1980年代後半にソ連の影響下が低下したポーランド、ハンガリーなどの東ヨーロッパ諸国において起きた民主化革命(東欧革命)の全貌について、関係者らの証言と公文書の分析などから明らかにすることを試みている。社会の変化を感じ取れる作品である。       井上信次先生の読書ノート 健康生成力SOCと人生・社会 全国代表サンプル調査と分析(有信堂高文社 2017) 山崎喜比古/監、戸ヶ里泰典/編  SOC(Sense of Coherence)に関する実証的研究をまとめた書物である。アーロン・アントノフスキーによって提唱された健康生成力論を基本としたSOCは「何が健康をつくるのか?」という視点で、医療福祉分野を中心に近年よく用いられる概念であり、尺度である。ストレス対処やレジリエンス、その社会経済的要因について関心がある人は是非とも一読いただきたい。   社会のなかの「少年院」 排除された子どもたちを再び迎えるために(作品社 2021) 少年の社会復帰に関する研究会/編  本書は、少年法改正をはじめとする制度改革の動向、少年院での矯正教育、社会復帰支援をまとめ、さらに複数の視点からこれらの現状と課題が明示されている。少年院の現状と未来、研究者の役割などについても議論され、特にソーシャルワーカーとして更生保護で活躍したいと考えている人に読んでほしい。       血のつながりと家族のかたち わたしたちが血縁を意識するとき(晃洋書房 2021)久保原大著  「2020年12月4日に生殖補助医療の提供等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律」(令和2年法律第76号)が成立し同月11日に公布された。それ以降、AID(非配偶者間人工授精)、出自を知る権利がそれまで以上に注目されている。本書は、生殖補助医療の進展に伴う親子関係における「血のつながり」について深く考察されている。今後、医療福祉にすべての人に読んでいただきたい。           小松尾京子先生の読書ノート 新!働く理由 111の名言に学ぶシゴト論。(ディスカヴァー・トゥエンティワン 2019) 戸田智弘/著  『働く理由』『続・働く理由』に続く、働く理由シリーズの第3弾。大学を卒業したら働くのは当たり前。だから大学3年生ともなれば就職活動に精を出す。だけど、私たちは何のために働くのだろう?みんなが就職するから?生活のため?お金を稼ぐため?自己実現のため?「111の名言に学ぶシゴト論」とあるように、人生の先輩方の名言に対し、著者の考えを述べ、「あなたはどう思いますか?」と問いかけている本です。就職活動を始める前に、おすすめの1冊です。   つみびと(中公文庫 2021) 山田詠美/著  切ない物語を書かせたら、右に出る人はいない!と言わしめる山田詠美ですが、その山田詠美が、「罪とは何か」という問題に正面から向き合った作品です。なぜ、母親は子どもたちを置き去りにしたのか。悪いのは母親なのか?痛ましい事件の深層に何があったのか……。児童虐待を「事件」としてではなく、人間のどうしようもない部分も含めて描かれた本です。児童福祉に興味のある方にはぜひとも読んでほしい1冊です。     わすれられないおくりもの(評論社 1986) スーザン・バーレイ/さく・え、小川仁央/やく  みんなから頼りにされているアナグマさん。でも、誰しも死は避けられない。アナグマさんは「長いトンネルの向こうに行くよ、さようなら」と手紙を残していきます。死にゆくもの、残されたもの、悲しみとどう向き合うのか、考えさせられます。みんなの中にアナグマさんが残したものが生きている……。絵本ではありますが、大人でも十分読み応えのある、グリーフケアの一助となる本です。         松田実樹先生の読書ノート かぎりなくやさしい花々(偕成社 1986) 星野富弘/著  口述筆記で書かれたこの書籍は、クラブ活動の指導中に頚髄損傷となり手足の自由を失った作者が、入院中に口に筆をくわえて文字を書き、生きる中で感じた様々な想いが書かれている。今や、花を添えた詩画集作家として一度は作品を見たことがあるような有名な作者ではあるが、その作品が生み出されるまでにどのような苦難を乗り越えてきたのか。小さな幸せを感じることの大切さに気付かせてくれる1冊。   ペコロスの母に会いに行く(西日本新聞社 2012) 岡野雄一/著  認知症のミツエさん。その生活を息子が漫画で書き記した1冊。「見えない糸で、見えない針で、縫い物をする姿」や「亡くなった夫とのかけあい」そんなミツエさんの日常が書かれている。コテコテの長崎弁で書かれた作品を読むとその世界観に引き込まれ、思わず笑いがこぼれ、まるで自分がその現場にいるような気分になってしまう。           合田衣里先生の読書ノート 元彼の遺言状(宝島社文庫 2021) 新川帆立/著  “このミステリーがすごい!”大賞を受賞された痛快ミステリーです。気は強いが、仕事ができる女性弁護士が主人公。続きが気になって、一気に読めてしまうのではないでしょうか。         友だち幻想 人と人の〈つながり〉を考える(ちくまプリマー新書 2008) 菅野仁/著  ドキッとするタイトルですが、人間関係に少し疲れた方は読んでみてはいかがでしょうか。著者は“みんな仲良く”は必要かもしれないが、“気の合わない人と並存する”作法を教えることが新たに求められているのではないかと問いかけています。           落合陽一 34歳、「老い」と向き合う 超高齢社会における新しい成長(中央法規出版 2021) 落合陽一/著  情報テクノロジーの専門家である落合陽一さんが、老いや介護についてテクノロジーの専門家の視点から書かれています。髪の毛で音を感じる装置等、最新の“介護テクノロジー”についてや、他分野から考える介護業界の未来についてが書かれています。             朴蕙彬先生の読書ノート 健康で文化的な最低限度の生活(小学館 2014~) 柏木ハルコ/著  生活保護とケースワーカーという仕事について漫画で学ぶことができます。難しいと思われがちな生活保護ですが、漫画なのでとても読みやすく、入門としてはとてもよくできた作品です。図書館にもありますので、ぜひ手に取ってみてください。       置かれた場所で咲きなさい(幻冬舎 2012) 渡辺和子/著  本書は、変わらぬ現実のなかで悩みに対するこころの持ち方についてやさしく語ってくれるものです。どの章からも読める短いエッセーが続くものなので、生きるなかで苦境があっても「いまをいきる存在」としてなにを優先にすべきかを考えさせられる1冊です。         スヌーピーのもっと気楽に 4 自分らしく(朝日文庫 2019) チャールズ・M・シュルツ/著、谷川俊太郎/訳  みなさんはスヌーピーを「かわいい」キャラクターとみているでしょうか。もちろんすべての登場人物がかわいくて、思わず微笑んでしまうストーリーですが、その一人ひとりはとても個性的な人物ばかりです。この本のなかのスヌーピーと仲間のやり取りから、自分らしく生きることについて考えてみるきかっけとなればと思います。           泉宗孝先生の読書ノート ビジネスパーソンのための「言語技術」超入門 プレゼン・レポート・交渉の必勝法(中公新書ラクレ 2021) 三森ゆりか/著  教員をしていると学生さんが眠たそうにしていると、自分の「伝える力」が不足しているからではないかと不安になることがあります。医療や福祉の分野で活躍される皆さんも社会に出れば、発信する側となることもあり、「伝える力」が求められることもあるのではないでしょうか。「微妙」や「なんとなく」といった曖昧な表現をよく使う方(私自身もですが……)は、少し意識付けという意味でも読んでみてはいかがでしょうか。         私たちはふつうに老いることができない 高齢化する障害者家族(大月書店 2020) 児玉真美/著  わたしたち福祉職はいくら寄り添っても、あくまでも側面的なケアであり、ひとりの利用者の一生涯を支えることは現実的には難しいのではないでしょうか。それだけにこの本に綴られている保護者の思いなどから、「障害のある方と一生涯を共にする」ということについて考え、障害のある方だけでなく、保護者支援についても考える機会になればと思います。視野を広げたいと思われる学生の方にはぜひ手に取っていただきたい1冊です。       愛蔵版 リト(モナ森出版 2020) 山元加津子(リト=文・絵)、村上和雄(「サムシング・グレート」に感謝して生きる=文)  ここ数年、コロナウイルス拡大に伴い、生活様式だけでなく、価値観も変化してきているのではないでしょうか。その変化に戸惑い、物事の本質が見えにくいこともあるかと思います。この本は、絵本のように物語を読み進めることができ、その中において、不安が蔓延する社会で何が大切なのかを気づかせてくれます。今だからこそ、読んでいただきたい作品で、子どもから大人まで読んでいただきたいファンタジーです。     柳廹三寛先生の読書ノート 「話す」「書く」「聞く」能力が仕事を変える! 伝える力(PHPビジネス新書 2007) 池上彰/著  この本は、「伝える力」の高め方について書かれた本です。ここでの「伝える」には、「話す」ことと「書く」「聞く」ことが含まれており、これらは「コミュニケーション」であるとされています。コミュニケーション能力は、現代において必須の力です。これから、大学を卒業し社会人の仲間入りをしていく学生の皆さんにとって必須の能力と言える「伝える力=コミュニケーション」をどうやって磨き・高めていくのかが書かれた1冊です。       This is Lean 「リソース」にとらわれずチームを変える新時代のリーン・マネジメント(翔泳社 2021) ニクラス・モーディグ、パール・オールストローム/著、長谷川圭/訳  時代の変化が速く、あらゆるモノやサービスの価値が不確かですぐに陳腐化してしまう現代において、組織は絶えず持っているモノやサービスを洗練し、付加価値を付け顧客に届けていくことが求められています。これは、私達のヒューマンサービス分野でも同様です。  この本は、顧客(クライエント)のニーズを捉え、サービスの提供・活動を実践していくために参考となる1冊ではないでしょうか?     チームワーキング ケースとデータで学ぶ「最強チーム」のつくり方(日本能率協会マネジメントセンター 2021) 中原淳、田中聡/著  多くのところでチームつくりやチームマネジメントの必要性が叫ばれています。チームワークに関す知識やスキルが「経験からの学習」に依存する中、この1冊は、「チームを動かすスキル」を学ぶために生まれた実践的な1冊です。参考にしてみてください。           岸本由梨枝先生の読書ノート 独学大全 絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法(ダイヤモンド社 2020) 読書猿/著  本書は、まず本の分厚さに圧倒され、通読するにはしんどい量かもしれません……ですが、つまみ読みしてもとても有用性のある1冊です。卒業論文のテーマや大枠を考える等、特に研究を行う際にとても参考になると思います。興味のある方、まずはちょこっと手にとって読んでみてください。         1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書(致知出版社 2020) 藤尾秀昭/監  本書は、企業経営者や研究者、芸術、文化人など、各業界で活躍する365人による金言集です。  読書が苦手な方でも1日1ページ、学校に行く前や授業の休み時間、寝る前などのちょっとした隙間時間に読むことができ、一流人の生き方や考え方にふれることができます。「よしやるぞ!」とモチベーションをアップさせたい方、ぜひ手にとって読んでみてください。     長宗武司先生の読書ノート 岡山まちづくり探検 地方創生時代の市民活動集(吉備人出版 2021) 岩淵泰/著  岡山県内から世界のまちづくりをまとめた1冊。岡山市を流れる西川で展開されている様々な活動、(私も関わった)スポーツによる街おこしに挑戦した学生団体、留学生がボランティアに参画する宿場町など、楽しみながらまちづくりの実践を学ぶことができます。         直感的統計学(日経BP 2006) 吉田耕作/著 高校生まで数学が大の苦手だった自分をデータ分析や経済学の先生へ導いてくれた1冊。「数学で平均以下の人たちへ」という言葉で始まる本書は、統計学の内容を数学嫌いな文系の方にも理解できるように丁寧に説明しています。難解な統計用語もその意味や日常での使い方が直観的に分かった途端に楽しくなるかもしれません。統計や数学に苦手意識を持っている皆さん、このデータ時代を生き抜くためにぜひ読んでみてください。       限界費用ゼロ社会 〈モノのインターネット〉と共有型経済の台頭(NHK出版 2015) ジェレミー・リフキン/著、柴田裕之/訳  「IoT(モノのインターネット)などの技術進化により、そう遠くない将来に世界中の多くのモノやサービスは、無料で利用できる社会が実現する」。信じられないかもしれませんが、皆さんもすでに無料でネット動画を視聴し、無料のオンライン通話を利用しているでしょう。世界に衝撃を与えたベストセラーは、モノを「所有」する時代(資本主義経済)から、モノを「共有」する時代(共有型経済)への移行を予言しています。               地域共生推進センター 加藤雅彦先生の読書ノート アウトサイダー 上・下巻(中公文庫 2012) コリン・ウィルソン/著、中村保男/訳  筆者はこの文芸評論を高校時代に読み、文学部に進むことを決め、実際に入学してしまった。人生の決定打となった作品である。トルストイ、ドストエフスキー、ニーチェといった巨匠による偉大作と著者自身との関係を見事に言語化している名著であるので、学生さんにはぜひご一読願いたい。しかし、断っておくが、この作品を理解したからといって自分が天才だと思わないこと。でないと、筆者のような惨めな人生を送ることになる。       科学の発見(文藝春秋 2016) スティーヴン・ワインバーグ/著、赤根洋子/訳  著者は、1979年にノーベル賞を受賞した米国の量子物理学者である。「近代科学の意義を断固主張する」という新聞の書評により手にして読んだが、その書評にいうほど近代科学の意義は伝わらず、科学史の教科書に過ぎないかと少々がっかりした。しかし、近代科学をわかりやすく説明している点では秀逸であるので、「科学」という概念を知ってもらいたい大学1、2年生の方々にはぜひお勧めの1冊である。       日本はなぜ敗れるのか 敗因21ヵ条(角川書店 2004) 山本七平/著  太平洋戦争に日本が負けた理由について、著者自身の軍人体験と陸軍嘱託であった小松真一氏が書いた『虜人(りょじん)日記』をもとに追及しながら記述された書。筆者が一生の問いにしている「日本とは何か」という課題について、最も近い答えを出している書である、と今のところ感じている。だから、学生さんに読んでいただきたいのだ。300ページあまりの新書であり、難しい漢字には仮名がふられているから読みやすい。       登録日: 2022年3月19日 /  更新日: 2022年5月7日 このカテゴリー内の他のページ 2023年度 私の読書ノート(教職員推薦図書) 2022年度 私の読書ノート(教職員推薦図書) 2021年度 私の読書ノート(教職員推薦図書) 2020年度 私の読書ノート(教職員推薦図書) Site Navigation 新見公立大学 Webサイト作成ガイドライン ウェブサイト利用規約 プライバシーポリシー ご意見・ご感想・ご質問 サイトマップ

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